夜明けの宝物
夜鳥の羽音なのだろうか
少し外が騒がしく感じる
目が覚めるとドーラの姿はなく
腰までしか掛かっていなかった布団が肩までしっかり戻っている
「ドーラが掛けてくれたのかな…」
とりあえずドーラの元へ向かおう
カラン…
ベッドから立ち上がると何かが落ちる音がした
「鱗だ…」
とても綺麗な鱗が落ちている
少し赤く光っているようにも見える
「もっていこう」
部屋を出て階段を下る
途中 調理場に彼女の後姿を見つける
朝食の準備をしてくれているのか
「ドーラ おはよう 何か手伝おうか」
「む…」
近づくとチラッ と一瞥をくれてすぐ後ろを向いてしまう
「おはよう…お主」
「どうした なんか変だよ」
「いやぁ…その…な…
昨日は迷惑をかけたのじゃ」
「構わないよ 君に必要とされて嬉しい」
「わしは構うのじゃ
恥ずかしいから座ってじっと待っておれ」
素直に従って椅子に座り 静かに待つ
鱗をじっと眺めたり 光に透かして見る
「お待たせなのじゃ」
それほど間のない時間で料理が運ばれてきた
スープと果実のようだ
「おお 鱗ではないか」
座りながら僕の持っている鱗に気づく
「そうなんだ ベッドから立ち上がる時に落ちてきた」
「ん-と…ここの鱗じゃな」
首をひねり身体を見渡す
左胸に近い位置を指さし
そこだけ不自然に肌色が見えている
「心臓に近い位置じゃな
近ければ近いほど鮮やかな赤色が混じる」
「そうなんだ とても綺麗だね」
そうであろう
そう自慢げに胸を張るドーラの左胸を見ていると
鱗が取れた場所がすぐわからなくなった
「あれ? 鱗が元通りになってる」
「ある程度動かせるのでの
周りの鱗を集めて均等に見えるようにしたのじゃ」
「この鱗…貰っていいかな」
「いいぞ その…最初の夜の記念じゃ」
顔を伏せ 身体をくねらせもじもじしている
が 笑っている口が見える
「恥ずかしいな 何もしてないじゃないか」
「くふふ 冗談じゃ」
「でも…この世界で初めて手に入れた僕の宝物だ」
「む…そう聞くと鱗が羨ましいの」
わしも鱗になりたいのじゃ
なんて呟くドーラはとても楽しそうだ