真夜中の出来事
夜中に意識が覚醒する
目の前に気配を感じた
ゆっくりと目を開ける
「ドーラ…?」
淡い星明りが反射して
燃えるような深紅の瞳が光っている
両方の腕を僕の肩付近に突き立てて
押さえつけられているような恰好になっている
「寝顔が見たかったのじゃ
すまん起こしたの…」
「まだ夜中なのかな」
「夜明けは遠いの 夜鳥も帰ってこぬ」
「僕の寝顔をみてもつまんないと思うよ」
「そんなことはないの
それに…あまりに静かに寝ているから
心配になってな…」
「死んだのかって?」
「いや…もしかしたら…
消えてしまったら… どうしようかと思ったのじゃ…」
涙声になっている…泣いてしまったようだ
「そうか…ドーラ…おいで」
僕の言葉に腕の力を抜いて倒れこんでくる
「うぅ…すまぬ…」
抱きしめながらドーラを落ち着かせるように語り掛ける
「大丈夫…でも僕はどこにもいかないよ…」
「じゃが…わからんではないか」
「信用がないな」
「まだ一日も立っておらぬ…今後わしに嫌気がさすかもしれぬ…」
ずいぶん心配性なドラゴンもいたものだ
「約束するよ…ずっとここにいるって」
「信用できんのじゃ」
「じゃぁこのまま…信用できるまでどこにも行かないように捕まえててよ」
「そうするのじゃ」
ギュゥ~っと力強く抱きしめられる
「今日はこのまま寝ようか…布団に入っておいでよ」
「まだ同衾は早いのじゃ」
そういって離してくれない
ほとんど同衾だと思うが
同じ布団で寝るのはまだ早いそうだ
「じゃぁ…寒くないならこのまま寝ようか」
「うむ…大丈夫じゃ…おやすみ…お主…」
「うん…おやすみドーラ…」
ドーラのぬくもりを感じながら目をつむる
時折鼻をすする音が聞こえる
まだ泣いているようだった
無言で頭を撫でてみる
抱きつく力がまた少し強くなる
そのまま どれくらい時が過ぎたのだろう
抱きしめらている腕の力が弱まっていき呼吸がしやすくなる
スゥスゥとかわいい寝息を立て始めていた
それを確認して 僕もようやく眠りにつく