霊能者黒木4
part 4
黒木ちゃんが盗聴器を仕掛けてからきっかり十五分後、哀れなターゲットこと安石さんは自室にのこのこ帰ってきた。
「黒木ちゃん黒木ちゃん、帰ってきたみたいだよ」
「よし、じゃあそのまま奴の詐欺の証拠を掴め。俺はこのまま別の任務を遂行する」
「任務って○神のデイリー任務じゃん。さっさとこっちきて手伝ってよ。」
「えー」
嫌がる黒木ちゃんにもう一つのヘッドホンを付けさせた。これで少なくとも私だけが怒られることはないだろう。
「あ、何か言ってるよ、静かにしててね黒木ちゃん」
どうやら安石さん、独り言を言うタイプらしい。
《今月の入信者は…なるほど、やはりメディアによる宣伝の力は大きいですね。このペースでいけば目標金額まで…まぁ3ヶ月と言ったところでしょうか。うーん、テレビ様様ですね!》
…どうやら安石さん、仏道にあるものという清純なイメージに反してかなりの俗物とみえる。しかしこれだけでは彼のやっていることがインチキだとは…
《ここまで弄してきた小細工も無駄ではありませんでしたね。世間の馬鹿どもの騙されようはいっそ面白いくらいでした、いやはや、無知は罪とはよく言ったものですよ。》
即自白した。なんやねんお前。
「どうやら安石は俺の読み通りただの詐欺師だったようだな。手口は分からねえが、それもこれから聞いていけばあっさり吐くだろ」
「まさかここまでうまくいくなんて…ていうか独り言で色々言いすぎでしょ」
世の中馬鹿ばかりと言う本人こそがかなりの馬鹿というこの構図は、中々に皮肉だった。
《さーて、ではそろそろお仕事を始めますか!今日も仏の素晴らしさを馬鹿どもに説く…おや?誰ですかあなたは?》
「⁉︎」
《もしかしてスタッフの方ですか?大丈夫、ちゃんと準備はできていますよ、放送までには間に合うでしょう》
突然安石さんが語りかけてきたので盗聴がバレたのかと焦ったが、どうやら安石さんの部屋に訪問者が現れたらしかった。
《え、なぜこっちに来る…あ、サインとかが欲しいのですか?残念ですが今ペンが…ぐっ⁉︎うっうぅぅぅぅ⁉︎》
話している途中に安石さんが、明らかに尋常ではない声でうめき出した。どうやら口を押さえられているようで悲鳴はくぐもっている。
「黒木ちゃんこれやばいよ!安石さん何が何だかわからないけど襲われちゃってるよ⁉︎」
「騒ぐな、本当に殺人犯がいたとして今大声でも出してみろ、俺たちまで殺されるぞ」
「だからって!」
「何もしないのが嫌なら救急車でも呼んでろ。もし安石が死にかけてるってのが間違いだったとしてもお前に非はない」
大急ぎで119番に電話した。流石に警察にまで通報するのは気が引けたが、割と落ち着いて話せたとは思う
「救急車呼び終わったよ、あと7分くらいで来るって」
「さすが元警察、そろそろ犯人も逃げ終わった頃だろうから、安石の状態を確認しにいくぞ」
「うん…でもあの時隣の部屋に行ってたら、安石さんも助けられてたし犯人も捕まえられてたかもしれないって考えちゃうよ。勿論二人とも殺されてたかもしれないけどさ」
「まだ安石は死んだわけじゃねえ、それに犯人が捕まることは遅かれ早かれ確定してる。何せここには名探偵中の名探偵、この俺がいてやってるんだからな」
そう自信満々に言う黒木ちゃんの姿は、選択を他人に預けた上にぐちぐちと文句を言う私のような人間にとっては直視できないほどに眩しかった。
彼女の探偵としての無能さを、忘れたわけではないはずなのだけれど。




