霊能者黒木3
part 3
「はー…ぜはー…死ぬ…死ぬやつだよこれ…」
「何をバテてるんだ、早く立ち上がれ」
「もっと優しくしてくれても良くない?黒木ちゃんをここまで抱えて運んできたのは私なんだよ…?」
バス代がなかったため、テレビ局までヒッチハイクとBダッシュを駆使するハメになった私達だったが、黒木ちゃんが走るのをすっごい嫌がったので私が運んだのだ。
「あの時の黒木ちゃんの『え、走りませんけど』みたいな顔…今思い出しても腹が立つよ」
「そもそもバスが使えなかったのはお前のミスだろ無能、だから警察もクビになるんだ」
「正論は人を傷つけるんだよ!いたいけな女子を傷つけて楽しいの⁉︎」
「楽しかねーけどお前は十分痛い女だよ」
そんなパワハラを受けたあとスタッフさんから今日の予定を確認して、安石さんの部屋に行こうと予定をたてたのだが…
「留守だね」
「留守だな」
残念ながら外に出ているらしい、近くには見当たらないし、挨拶はまた後に…などとおもっていると
「つまりこれの出番だな」
そう言って黒木ちゃんは、小さく黒っぽい機械を取り出した、どことなくイヤホンに似ている気がする。
「なにそれ」
「盗聴器だ、ケルちゃんからもしもの時のためにって預かってた。推理が失敗した時に備えてあらかじめ相手の詐欺師の化けの皮を剥がす準備もしておくんだってさ」
マジかよ、自分でたびたび名探偵とか名乗ってくるんだから一回くらいまともに推理をしようとしてくれ。
「いやいやいやいや!ダメでしょそれは!それは…犯罪だよ!盗聴は立派な犯罪、いくら推理勝負に負けたくないからって相手も巻き込むような真似は看過できないよ!」
「そもそもこれは推理勝負じゃねえ、霊力勝負だ。俺たちは俺たちなりのマジカルパワーを使っていかなきゃダメなんだよ」
「全然マジカルっぽさがないんだけど…やめとこ?ズルばっかしてると将来ロクな大人になれないよ?」
「ろくでなしに言われてちゃ世話ねえな、じゃあ何か代案があるのか?」
こんな(見た目は)年端も行かない女の子からろくでなしなんてさらっといわれて元公務員のプライドはズタズタだが、汚名返上のための代案はそう簡単に出てきてくれなかった。
「うーん、うーん、………ほら、あらかじめ相手と話し合っておいて、今回の推理における落とし所を決めておくとか」
「それ、そんなに変わんねえだろ、おんなじ汚い手だろ、マジカルじゃなくてロジカルだろ。」
「そんなしょーもない駄洒落の踏み台にされるとは…でもなぁ…認めたくないけど、認めなくてもやるんでしょ?」
「当然だ、俺の気持ちが最優先だ」
黒木ちゃんの論理はともかく、リアルに仕事がかかっている状態では上司の意向には逆らえない。しぶしぶ折れると言うていで話したが、結局私の意見など誰も聞いていないのだ。
「じゃあこれをここにセットして…と、さっさと部屋に戻るぞ、ここにいることを誰かに見られたら台無しだからな」
「うう、これじゃどっちが犯罪者なのかわからないよ…」
「何を言う、名探偵の推理行動のためならどんな犯罪も暗黙のうちに看過されるのだ。」
「深いようで浅い気がする…そもそも推理じゃないし、足を引っ張るためだし」
「ぶつくさいうな、もうやったことはしょうがねえだろ、それにな…奴が本物の霊能力者でありさえすれば、俺たちの行動は全て無意味に終わるんだ、正直者が報われるいい話じゃねえか」
黒木ちゃんの身勝手で理不尽な行動が、事件解決のためにどうしても必要な一手になるとは、この時は誰も思っていなかった…まぁこの細工の事を知ってるのは黒木ちゃんを除けば私だけだったんだけど。




