名探偵黒木3
名探偵黒木 3.
part 4
おかわり必至の激ウマギャグ(秋田米だけに)を放って華麗に章転換したわけだが、これから始まるのは地道な聞き込み、対象はもちろん女将さんである。それはいいのだが問題がひとつだけあった。
「ねぇ、本当についてくる気なの?」
「当たり前だ、俺は名探偵だぞ」
黒木ちゃんが聞き込みに同行すると言って聞かないのだ。探偵ものならここで警官はすぐに引き下がるだろうが、ましてや西黒家達(偽名)並の探偵が事件を解決してくれるというならむしろこっちがついていくぐらいなのだが、残念ながら今のところ彼女は名探偵らしいことを何一つしていない、これではただのお荷物である。
「じゃあさ、私が聞いてきた結果を教えてあげるから待っててよ」
「でもそれは理想的ではないよなー、秋田というフィルターがかかるわけだし」
「アイス買ってあげるから」
「マジ?じゃあそれで」
いいんだ…いや目的は達せられたけど、それでいいんだ…
「よくそれで名探偵名乗れたね」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもないよー、ほら、アイスを選んできてねー」
あの子、本当にどこら辺が名探偵なんだろう?
part 5
「香川公子、この旅館の女将をしてます。で、刑事さんがなんの用です?私に話なんか聞く前にさっさと夫を殺した犯人どもを見つけてくださいよ、私は何も知りませんからね」
女将さんということからたおやかな女の人をイメージしていたが、香川さんはそれとは真逆の性格の人だった。まぁ夫を亡くしてすぐなことだし、あえて気丈に振る舞っているのかもしれない、それに泣き崩れられるより話が聞きやすくていい、理想とはいえなくても次点の遺族かもしれない。
「犯人の姿を見たり、何か特徴的なことがあったりしませんでしたか?」
「ないです」
食い気味に否定された
「全く何も変わったことはなかったんですか?」
「ないです」
「…」
警察が嫌いだったりするんだろうか
「殺害時間に心当たりは…?」
「ないです」
これだけ何も知らないことってあるだろうか?旦那さんの断末魔とか聞いたりしなかったのかなぁ、トラウマになりそうだけど。
「警察に通報された時はどんな様子でしたか?」
「通報はあの女の子がやったことなので知りませんね、そんなことより刑事さん、人が一人殺されたのに警察は一人だけしか来ないんですか?そんなに薄情なんですか、日本の警察っていうのは」
私のような者が一人いるだけだと頼りないということだろうか、もうなんだか泣きたくなってきた。
「いえ、あと数時間で捜査隊が到着しますよ、私はそれまでの現場保全要員です。」
「そうですか…そういえばあの女の子は?」
「今、表の自販機でアイス買ってますね…私の財布で」
「お腹が空いているんですかね…?刑事さん、それならあの子を呼んでいただけませんか?お茶でも飲んでください」
お、気を利かせてくれたらしい。旅館っぽい
「いいんですか?ありがとうございます。じゃあちょっと出てきますね」
part5.
そうして黒木ちゃんを呼ぶために一旦旅館から出て、自販機のところに行くと
「お、あなたが秋田さんですか?私、この名探偵黒木ちゃんの助手をしているケルという者です。どうぞ気軽にケルちゃんとお呼び下さいねー」
そこには犬耳犬尻尾のコスプレをしているビキニ姿で赤毛の痴女がいた。
「なっ…なぜ陸地で水着を…?ここ結構山寄りの地域…いやそうじゃない!なんなんですかあなたは!」
「いや自己紹介したじゃないですか、助手ですって」
驚きつつ黒木ちゃんを探すと、自販機の横のベンチに腕いっぱいにセブン○ィーンアイスの生キャラメルリボンを抱いて座っている彼女を発見した…っておい
「何個買ったの⁉︎」
「分からん」
「普通…普通一個でしょうがよぉ!おいおいおいおい水道代分ぐらい買ってんじゃん!そんなに食べ切れるの⁉︎」
「分からん」
「食ってから新しいの買えや!せめて!」
ってそうじゃない、今問題なのは私の水道代がトんだことよりも…それよりも重要なこと、あるかなぁ
「…で、そのビキニの人は知り合いなの?黒木ちゃん」
「おう、俺の相棒、ビキニ探偵ケルちゃんだ」
「海パンデカみたいな異名つけられてるじゃん…」
「今つけた」
「やめてあげろよ!相棒を大切にして!」
まぁとりあえずただの変態ではないらしい、おそらくそのカッコにも探偵らしい理由があるのだろう、あってくれ。
「まぁそういうわけでですね、この私ケルちゃんは、いつものことながらも黒木ちゃんのピンチに颯爽と助けに来たわけですよ、では事件の概要をお聞きしましょうか、私、呼ばれてきただけなので今回は何があったのか全く知らないのです」
「え、情報共有とかなかったんですか?黒木ちゃんから」
「黒木ちゃんの発言は大部分がふわっとしていて要領を得ないのです」
探偵失格だろ…ミステリー世界では一般人ですらヒントになる発言はするのに
そうして私がケルちゃん(それとなく本名を聞いたらケルちゃんと呼ぶことを強要された)に事件の経緯を説明したところ、ケルちゃんはこういった
「成る程、解けましたね」
「ほんとだ、べっちゃべちゃになってる。汁が垂れ出してる、あーあ、服まで汚しちゃって」
「いや黒木ちゃんのアイスの話ではなく」
「あ、ごめんなさい」
ならば何がとけたんだろうか、この事件はすでに犯人、つまり強盗犯が逃げてしまっているわけだし、犯人の潜伏先でも分かったのだろうか
「さて、秋田さんは女将さんに呼ばれているのでしたね、ではみんなで女将さんに会いにいくことにしましょうか、いつもの手間が省けてやりやすいですね」
「ごめんなさい、さっきからケルちゃんが何を言っているのかよくわからないんだけど…」
「決まっているではないですか」
そうしてケルちゃんは、ぽっと出のキャラクターにあるまじき風格をたたえつつ言い放った。
「名探偵が一同を集めるといえば…解決編に決まっているのです」




