名探偵黒木 2.
1 探偵編
part2
「パパ?いや、でも苗字が…」
そんな私の当然の疑問に対し、黒木と名乗る少女は尊大に言い放った。
「偽名だ」
「偽名?」
それは本当の苗字は黒木ではないと言う意味だろうか、それなら最初からそういえば…
「俺のパパは西黒家達なんて名前じゃねえ、あれはパパがメディア受けを狙って考えた偽名だ、本名は黒木俊朗」
「うっそでしょう⁉︎」
あの西黒家達…いや黒木俊朗、全国民から注目されていると言ってもいい身分のくせに堂々と嘘をついていたらしい、しかもメディア受けとか言うしょぼい理由で、ふざけんな。
「で、お前はたった一人で何しにしたんだよ、刑事」
「私が刑事であると既に知っている…!」
さすが名探偵の娘(と自称する少女)、私が刑事であると一目で見抜くとは、どうやら溢れるオーラ的なものを見ただけで感じ取ったらしい、侮れないものである。
「いやパトカーから降りてきたんだからそれ以外ねえだろ…馬鹿なのか?」
…そういえばそうでした。なんか舞い上がっちゃって探偵ものに出てくるモブみたいなリアクションしちゃった、めっちゃくちゃ恥ずかしい。
「そんなことより!なんでこの場にあなたがいるのか聞いてもいいかな?まさか名探偵の娘に期待して警察が事件を解いてもらおうと呼んだとか?」
「違うね」
黒木は私の(恥ずかし紛れの)問いかけを無下に否定しつつ自信満々に、さながらフィクションの名探偵が輝かしい登場とともに名乗りを挙げるかのようにこう言った。
「名探偵ってのは事件現場に行くんじゃない、『名探偵がいるから、そこが事件現場になる』のさ」
part3
そんなキメ顔カットインを挟みつつ旅館に入って現場の封鎖作業を完了した私は(ついでに黒木ちゃんへの自己紹介もクールに済ませた)、事件の大まかな整理をしようと思い立っていた。課長からは現場をとにかく厳重に封鎖すること以外は何もするなとしか頼まれていないが、デキる刑事は頼まれた以上のことをするものなのである。
「聞き込みするならまずは第一発見者かなー」
「あ、それ俺だぞ」
「さすが名探偵…!ていうかなんでここに?」
「俺が解かなきゃ誰が解くんだ、この事件を!」
まぁそれは警察の仕事なのだが
「じゃあどんな様子だったか聞かせてくれる?」
「んー、おっさんが倒れてたな、あと小銭が散らばってたぞ、その中から五百円くらいパクったかな」
「え、やめなよ…」
そして思ったより証言がしょぼい、小銭を抜きにしても、とても名探偵とは思えない供述だ。
「もうちょっと具体的な説明とかない?怪しい人影とかでもいいけど」
「小銭しか目に入んなかったな」
「このままだと黒木ちゃんを逮捕することになるよ?」
小銭窃盗犯と第一発見者は怪しいの法則に従ってだ。
「まぁ待て、俺には相棒がいる、そいつがきっと事件をたちどころに解いてくれるだろう、だから俺を捕まえるのはまだ早い、やめろ秋田米」
「舞ね、コメじゃない、あとさっき黒木ちゃん、自分以外の誰がこの事件を解くんだとか言ってなかった?」
「相棒の手柄はすなわち俺の手柄なんだよ」
「…」
まぁこの程度の証言ならなくても現場を見ればわかったが、逆を言えば現場の保存はしっかりとなされていたらしい。
「この旅館って事件があったとき他にお客さんっていた?」
「いなかったぞ、俺、女将、あと殺されてた女将の旦那だけだ」
「その辺は事前の調べと変わらないか…じゃあ次は女将に話を聞こうかな」
犯人と思しき連続強盗犯は既に逃げ去っているだろうが、その特徴をもしかしたら目撃しているかもしれない。
「いいけどよー、殺されてた場所、ちゃんと見とかなくていいのか?」
「まぁ写真も撮ったし大丈夫じゃないかな」
まぁ本当は飽きちゃったっていうのも大きいんだけどね…秋田だけに!




