霊能者黒木5
part 5
「うーん…死にかけてるな」
救急への連絡が終わってから安石さんの部屋に行ってみたが、大体の予想通り彼は刺されていた。息はあるようだがそれも絶え絶えと言った様子だ。
「救命処置とかはケルちゃんにもらったマニュアルに書いてねえんだよな…」
「あ、さっきの手際やけにぱきぱきしてると思ったらマニュアルに従ってたんだ」
通りでいつもはアホそうな黒木ちゃんがあの時ばっかりは頼り甲斐があるように見えたわけだ。
「うーん、でも私も何すればいいのかはよくわかんないよ?こんな状況に出くわしたことないし」
「使えねー!」
「あの…早く助けてくれませんか?」
そんなこんなで安石さんは運ばれていき、現場には(多分救急隊の人が呼んだ)警察が押しかけてきて、第一発見者の私達は彼らにお呼ばれしたのだった
「それじゃあ名前と職業を」
「俺は黒木、心霊探偵だ、ご依頼は事務所を通してからにしてくれ」
「うーん、もっとこう…ほら、ちゃんとしたあれを…」
「大学生だ」
「話が早くて助かるよ」
「私は秋田舞、元警察官かつ現探偵助手です、尋問は弁護士を通してからにしてください」
「やかましいわ、秋田さんのことはよく知っていますよ」
ある意味当然ではあるが、呼ばれてきた警察官は元同僚だった。彼を通して職場に居た人達に、秋田舞は今も元気でやってるんだよってことを伝えたい。
「元気すぎて困るくらいなんですけど…なんでまた殺人現場にいるんですか、刑事でもないのに」
「しょうがないじゃん、私たちはただ巻き込まれただけなんだから」
「おい警官、さも当然かのように安石が死んだ前提で語るな、俺たちには何の責任もないからな、聞いてたからといってもあれは不可抗力だ」
「聞いてたからといっても?」
「あ」
黒木ちゃんが勝手に自爆したせいで、盗聴器のことを説明する羽目になった、黙ってれば疑われることもなかったかもしれないのに。流石に安石さんのインチキ疑惑については名誉毀損とかになるかも知れなかったのでぼかしたが、肝心なことは全て包み隠さず伝えた。こんな誠実な私に対しての評価は
「盗聴か…秋田さんも落ちたもんですね、いや、元々そんなに落ちる余地はなかったか」
というものだった。ひどい。
「そんなことより犯人はわかったの⁉︎この税金泥棒め!」
「よくそんな言葉、元同僚に浴びせられますね…機密情報をあまり漏らすわけにはいきませんが、正直なところよくわかりませんね、犯人の候補が無数にいるんですよ」
どうやらこの時間にはちょうどテレビ局に人が増えるらしく、犯行が可能だった人も10人ではきかないらしい。極め付けに決定的な証拠もないため、犯人探しは難航しそうなんだとか
「まぁ動機さえわかれば早そうですから、仕事としては楽な方ですよ、三日以内には確実に目星くらい付くでしょう、もう帰って結構ですよ」
というわけで私たちは持ち物検査を受けた後に帰る許可をもらった。黒木ちゃんは
「目の前で事件が起きたんだから俺が解決するんだ!するったらするんだ!」
などとごねていたが、手錠をちらつかされてビビりながら逃げていった。どうやら今回は探偵の出番はなさそうだ




