偽聖女の最後
怪我とか処刑とか出てくるので、苦手な方は注意です。
「どうしてこんな事になってしまったのでしょう」
暗く寒い地下牢でミスティーは独言た。
彼女は今日これから聖女を騙った犯罪者として処刑される。
冷たい石で囲まれた牢屋は座っているだけでも辛かった。
「そろそろ時間だ」
鉄格子の外に神妙な顔をした騎士と、笑いを堪えたような顔の役人がやって来た。
「この事は誰にも言わないでくださいね」
「ああ、あんたは命の恩人だ。あんたの頼みなら誰にも言わない」
最初の間違いはおそらくあの時だろうとミスティーは思った。
平民であったミスティーは森で採取をしている時に、獣狩りの罠にかかった男性を助けた。いわゆるトラバサミと言うやつだ。肉を切り裂き骨を砕いていた。放っておいたら足が腐るか感染症で死んでしまっていただろう。ミスティーは魔法の様な力を使ってその足を元通りにしてやった。
口外しないでくれと頼み込んで別れたが、数日後には周辺で噂になっていた。
奇跡の様な力で傷を治す女が居る。聖女に違いない、と。
ミスティーは地味で目立たない娘だったがあっという間に特定された。
そもそも彼女が自分で聖女だと名乗った事はなかったし、それ以降、力を使う事はしなかったが公爵家によって囲われ、一年もしないうちに養女にさせられてしまうのだった。本人は平民として静かに暮らしたいと主張したのだが聞き入れては貰えなかった。
「王太子と婚約ですか…。出来ればそう言うのは遠慮したいのですが…」
「悪いが君に拒否権はない」
あれよあれよと言う間に話は決まり、結婚式の日程まで決まったある日、ミスティーは偽聖女として断罪された。
それが初めから画策されたものだったのか、それとも何かの陰謀に巻き込まれたのかは分からない。
分からないが、浮気やら暗殺やらの容疑から、実際に犠牲者が出てその罪を被せられたりした。
莫大な金銭を懐に収めた者や実行犯を野放しにして、全ての罪を関係のない女1人になすりつけて良しとする。この国は大丈夫なのだろうかと他人事の様に心配するミスティーだった。
急で登りにくい石の階段を登る。
ぼろいサンダルなので爪先を打つけてしまって痛い。
階段の上、外から喧騒が聞こえてくる。
階段は暗く、外は明るい様で出口の外は眩しくて良く見えない。
一歩一歩体を持ち合いげる様にして歩き、登り切ると外に出た。
目が慣れるとそこはスタジアムの様な空間で、観客がビッシリと観客席を埋め尽くしていた。
正面には断頭台が設置されており、その向こう側には王侯貴族が座る箱の様な特別席がある。
そこには婚約者だった王太子、自分を養子にした公爵。自分を断罪した為政者達がそろってこちらを見ていた。
「最後に何か言い残す事はあるか?」
「残らないと思うので構いません」
「?」
横長に置かれた木の板に半円の凹みが3つある。
真ん中の少し大きめの凹みに首を、左右の小さめの凹みに手首を添えると、上から同じ様な板を取り付けて動けない様にされてしまった。
ああ、余計な事を考えないでただ眺めていたらもうしばらく楽しめたのに、失敗したわ…
貴族達が何やら宣言する。
観客からは罵詈雑言が飛び交う。
直接関わったことがある人間などほとんど居ないはずなのだが、みんな怒りに満ちた表情をしている。
いや、中には楽しそうに笑っている者も居た。
執行人によって巨大な刃物が解放され、ミスティーに打ち付けられた。
「ふをっ…!?」
真っ白な空間に置かれた大きなベッドの上で目覚める。
彼女は女神。
分かりやすくいえばミスティーが生きていた世界は彼女の夢だ。
ミスティーは、言うならば夢の中で生活するためのアバターの様な物だった。
見ているだけでは我慢ができなくなって入り込んだ結果、殺されたショックで目を覚ましてしまったのだ。
「せっかく1億年も続いた夢が終わってしまったわ…」
女神は起き上がり周りを見回すが何もない。
そう、彼女の世界には何もないのだ。
「また、眠くなるまでしばらくここで1人か…」
どこからか出したテーブルセットにつき、自分で出したお茶を飲むのだった。
思いつきで書きたいとこだけ書いたのでなんかすんません




