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群像転生物語 ――幸せになり損ねたサキュバスと王子のお話――  作者: 宮島更紗/三良坂光輝
二章    ―― 夢と空の遺跡 ――
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 夢5 『夢魔法の使い道』

 ゴブリンとリザードマンの集団が重なりあい、戦いを繰り広げている。

 切り裂き、削りあい、潰しあっている。


 いくら倒れても、その数は減ることはない。


 私と、メフィスが魔法で生み出しているからだ。


「何故……何故君が夢魔法を使えるんだ!」


「私が使ってるんじゃないよ。指輪が使ってる」


「訳の分からないことを!」

 私だって詳しく分からないよ。でも、リザードマンを生み出しながらなんとなく、この魔法のことは理解できてきた。


 多分、これは夢の中で何か味方を生み出せる能力だ。

 その何かは自分のイメージにかかっている。

 私がこれまで見てきたものを強くイメージすれば、それが生み出せる。


「君がそのつもりなら――僕は!」

 メフィスの両手から赤いしじまが吹き上がり、大きくうねりを上げる。

 電撃は収縮し、魔族の姿へと形づけられる。


「……フィリーと、私?」

 電撃は、赤のグリフォン種と、細くて綺麗なサキュバス種へと変化した。

 ……また私? 芸が無いよ。


「だったら――」

 私は頭の中で強くイメージを行い、指輪から電撃を発生させる。

 それは、思っていたよりも簡単にできた。


 だって、こちらの世界に生まれ変わって、小さな頃から見てきた相手だから。


「……ふたりとも、お願いね」

 私の両脇には、エアとリレフがいた。

 上空でフィリーと戦っているふたりじゃない。

 私が生みだした、私の仲間だ。


 エアとリレフは重なり合い、メフィスが生み出したグリフォン種とサキュバス種に戦いを挑む。

 本物の私たちでも苦戦した、ふたりのコンビネーションが繰り広げられる。

 あの敵は、あのふたりに任せよう。


 私の相手はメア種のメフィスだ。


「くそ、クソ、糞!!」

 私はゆっくりとメフィスに向け近づいていく。メフィスは私を怖れ、後ずさりしていく。


「だったら――だったらぁああ!!」

 メフィスの両手から膨大な量の電撃が溢れ出る。それは見上げるほど大きく、家よりも巨大な姿に形作られる。


「はぁ、はぁ……これなら――これならどうだ! 僕が知る、最も強い存在だ」

 十メートルはあるだろう巨大で筋肉質な身体、オットセイのような牙。

 それは巨大なゴブリンだった。

 私も見たことがある、というか戦ったことのある存在だ。


 確かに、この巨大ゴブリンは強かった。私たち四人がかかりでも勝てるかどうか分からないくらいに強かった。

 けどね――


「メフィス、上には上がいるんだよ」

 私は頭の中でイメージを作り、電撃を放つ。

 この巨大ゴブリンにぶつけるのは――お父さんだ。


 幻獣化したお父さんはハッキリ言ってチートなみに強い。

 巨大ゴブリンだってものともせずにやっつけ――


『だろう!? そうだノエル。お父さんはね。最強に強いんだぞぉお!!!!』

 ……。


 私は生み出そうとした寸前で指輪に流す魔力を止める。

 

 お父さんのドヤ顔と調子に乗ったセリフが頭の中を通り過ぎたからだ。


「……うぇ」

 ウザい。これはウザい。なんかやだ。このタイミングでお父さんに頼るのはなんかムカつく。


 って――岩!?


「ぎゃぁあああ!!!!」

 私に向け飛んできた巨大な岩石をすんでのところでしゃがんでかわす。

 巨大ゴブリンの土魔法だ。


「折角調子良かったのに! お父さんのせいだ! 邪魔すんな!」

 なんか理不尽な気もしなくもないけど、とりあえずお父さんに文句を言っておく。

 巨大ゴブリンのパンチが私をかすめ、突風で吹き飛ばされそうになる。

 えっと――後、誰かコイツを倒せそうなのは……


『え、えっとノエル? お父さんが――』


「ウザい! 出てくるなぁ!!」

 私は頭の中で生まれてしまうイメージに文句を言いながら巨大ゴブリンから逃げる。


 逃げる。


 ――逃げる。


 ブルシャンの街並みが巨大ゴブリンに破壊されていく。いつの間にか、メフィスが巨大ゴブリンの肩に乗り、なにやら指示をしながら私を追いかける。


 いない。いない。倒せそうな存在がいない。


 もともと、魔族はろくに戦えないんだ。あんな化け物を倒せる存在なんて、いるけど、そうそういるわけない。


「あーもう、とりあえず、出てこい!!」

 私は振り向き、両手を巨大ゴブリンに向け差し出した。

 指輪が光り、赤い電撃が私の前に広がる。


「にー!!」

 私の魔力に呼応して、大量の妖精フェアリーが生み出された。

 視界を埋め尽くすほどの妖精フェアリーは巨大ゴブリンに向け集団で襲いかかる。


 巨体の顔に、身体に、ピンクの小さなブタが張り付き、埋め尽くされていく。

 巨大ゴブリンが腕を振り回すが妖精フェアリーのサイズが小さすぎてかすりもしない。


「い、痛! や、やめろ!!」

 メフィスも視界を妖精に覆われ、他の妖精に鼻や耳を引っ張られている。ピンクのブタに身体を覆われた巨大ゴブリンも戸惑いながらフラフラとしている。


 どうしよう……。それなりに足止めにはなったけど、ダメージはゼロだ。あの子ら戦えるわけじゃないし。

 もういっそのこと、私やフィリーを沢山だして、攻撃を――


 からり、と足元で音がした。

 見ると、ブタの貯金箱が足元を転がっている。


「うわ……懐かしい」

 妖精フェアリーに似た、昔使っていた貯金箱だ。妖精フェアリーを出すときにイメージの中に紛れ込んでたんだろう。

 一緒に召喚されるなんて、紛らわし――




 え、――



 えっ!?


 私は自分の中に生まれたイメージに驚愕する。

 情報が重なり合い、一つの結末に繋がっていく。




 そんなこと、できるの?


 でも……多分、できる。ってかここにコレがあるなら、やれないはずがない。

 正直、もう負ける気はしていないけれど、どうせ勝つなら、私はこの方法を選びたい。



 私は覚悟を決め、ピンクのブタに覆われた巨大ゴブリンを睨み付ける。


「いくよ。メフィス。多分、これが最後」

 大丈夫。今日の私は、絶好調だ。



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