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夜の街

作者: からくり

朝とか昼だとか俺たちにとっちゃ当たり前だよな?

だけどよ、不思議なことに夜しかねぇって街があるんだわ。

世界って不思議だろ?

あん?

その街に行きたいって……どこにあるかなんて知らねぇぞ?

一生をかけても旅するって……お前すげぇな。

そうだな……この話を聞いたのは東から来た旅人だったな。

東に向かえばあるんじゃねぇか?











おやおや……こんな何もない村に旅人が来るなんて久方ぶりじゃ。

お前さん、何が目的で旅をしてるんだい?

ほう、夜しかない街を目指して。

確かにその街はある。

ここから更に東に向かっていけばある。

だが、その話を聞いたのはもう随分前さね……

今もあるかどうか……

それでも行くというのかね?

ならば止めぬ。

若者が前を向いて歩くのを止める権利なんぞ誰にもありはしないのだから。











へぇ、お兄さん、夜の街に行くんだ。

ここに来るのにどれだけ掛かったの?

10年!!

凄いねぇ……あたしならすぐ諦めちゃいそうだ。

夜の街なら確かにあるよ。

あそこに山が見えるだろう?

あの山を超えて更にその向こう。

でもそう簡単にいけるかな?

自分の一生をかけても?

あぁ、お兄さんは……なるほどね。

応援してるよ、だから頑張ってね。











ようこそ、夜の街へ。

正式名称はあるにはあるのですが、いつの間にか失われてしまいました。

ええ、ここには朝も昼も夕暮れもありません。

常に夜。

私たちは月の下で生まれ、月の下で育ち、月の下で死ぬ。

そういう運命なのです。

あなたがここに来ることは知っていました。

ええ、ずっと前から。

あなたの目的はなんですか?











ここに来て1年が経ちましたね。

あなたが話してくれる旅の話は飽きることがありません。

火の海、雪の大地、爽やかな風、そして暖かなお日さま……

それらを私たちは見ることがありません。

この街から抜け出せないから。

出てしまえば私たちは死んでしまいますので。

それでもあなたは私にお日さまを見せるというのですか?

……ふふ、あなたらしいですね。

いつの日か楽しみにしています。











西の果てから東の果てを目指すのはそう簡単な旅じゃなかった。

何度も倒れそうになったり、道に迷ったりした。

それでも僕は諦めなかった。

いいや、諦めきれなかった。

僕の一生をかけてでも彼女に、名前も知らない彼女に、太陽を見せたいと思ったから。

彼女がいるのは夜の街だということは知っていた。

僕がなぜ彼女のことを知っているのかは知らない。

生まれた時から彼女に太陽を見せたいと思って生きてきた。

だから僕はこうして山を走っている。

彼女の手を離さずに。


「あなたは凄いですね。私にお日さまを見せようと頑張るなんて」


「うん? 何か言ったかい?」


「いいえ、何も。それより明るくなってきましたね」


「もうすぐだよ、もうすぐ太陽が……!」


木々を抜けたその先は景色が広がっていた。

目の前は崖だったけど、その景色ときたら!

見渡す限り森しか見えない!

上を見れば青い空!


ほら見てご覧、あれが太陽だよ!


その言葉を僕は出すことが出来なかった。


「……本当にありがとうございます。でも……あなたは忘れていたのですね」


私が、私たちが吸血鬼だということを。


「私たち吸血鬼は太陽を見れば灰になります。光に弱いのです。最初に会ったときあなたはこう言いました。「ならば僕が代わりになろう! 何度も何度も太陽を見せてあげる! 僕は何度も何度も生まれ変わる。その度に太陽を見せてあげよう! 君が死ぬ代わりに僕が死ぬ。そして何度も何度も見せてあげる!」と」


あぁ、そうだった。

僕は……僕たちは何度も生まれ変わる。

そういう種族だから。


「これで……いえ、数え切れない程のあなたを見てきました。その度にあなたは違う旅の話をしてくださる。その結末は同じなのに」


灰になっていく身体を感じながら僕はニッコリと笑う。


また君に太陽を見せてあげるからね。


「ええ、楽しみにしています。それではまたいつの日か」


うん、いつの日か。











僕は生まれ変わる。

不死鳥の如く。

何度も生まれ変わり、その度に記憶を失くす。

でも、あの子との約束は忘れない。

魂に刻みつけているから。


「ねぇ、夜の街って知ってる?」

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。


書きたいから書いてみたらこんな感じになってしまった。

まぁ、書きたいものを書いて何が悪いってことで、1つ目をつぶっていただけるとありがたいです。


それではまたどこかで。

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