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永遠の絆  作者: 青葉 千歳
1章
6/11

地獄がそこにある

「・・・・・そう。そんなに騎士様は私と遊ぶのが好きなのね、ふふふ」


「・・・・・」


 何が私をそうさせるのかは、もう分からない。ただどんなに心が壊れても、絶対に壊せないものが、あったような気がした。


 だからもしかしたら、私に地獄を強いているのは。


 私自身なのかもしれない。


「それにしても騎士様は本当に素敵ね。ここまで耐えたのは騎士様が初めてよ。まあそれは、もうとっくの前からの話だけど」


 しゃがみ込んで私の顔を覗く。やつは本当に感心したように私を見つめた。


「私は騎士様と遊べればそれでよかったけど・・・こうなると言わせたくなっちゃうわね。本当に騎士様は私を楽しませてくれる・・・最高だわ」


 淀みなく、やつは言葉をつなげる。


「でも不思議ね。どうして騎士様はそこまでするのかしら。そんなに姫様のことが大切?そんな価値がある?」


 お前に何が、分かる。


 姫様は、私の。


 ・・・・・。


「まあ、いいわ。お喋りはこの辺にしましょう。騎士様ももう、待ちくたびれたでしょうから、ね?」


 私の頭を掴みながら、やつは続ける。私は歯を、体を、心臓を震わせながらその言葉を聞く。


「今日は何がいい?せっかくだから騎士様に選ばせてあげるわ。四肢を引き千切るか、生きながらに臓器を取り出すか・・・どっちがいい?」


「・・・・・・・・・・・お願い・・・・・・・・許して・・・・・・・・・」


「だーめ。姫様のこと教えてくれないなら、騎士様はただ、()()()()()?」


「・・・・・・・・ぃ、ゃ・・・・・」


「はい時間切れー。そんな騎士様には両方しまーす」


 やつは私の右手首を掴み、ぐいっ、と引っ張り上げる。するとやつの握った部分が光り始める。


「ひぃぃ!!まって!!まってぇぇえええええ!!」


「はい、ぱーん」


 やつの言葉と同時に、私の右手首から先が弾け飛んだ。ちょうどやつの言葉通りパーン、という音と共に。


「ひいいいいいいいいいいいいいいい!!」


「そんなに叫ぶことないじゃない。騎士様はもう何度も経験してるでしょ?痛くない痛くない」


「痛い痛い痛い痛いぃ!痛いのぉ!!許してぇ!!」


「まだ誰にも見せてない魔法がたくさんあるの。騎士様にだけ特別に見せてあげるわ。だからわがまま言わないの、ね?」


「ひいいいいい!!いやあああああああああああ!!」


「今のは爆破魔法だけど今度は・・・ほら!」


 やつが左手首を掴むと、再びやつの握った部分が光り出す。先ほどのような突発的な痛みではなく、じわりとした痛みが全身に広がる。それは次第に強くなり、想像しがたい激痛に変わる。


 見るまでもなく、左手に襲いかかる感覚で理解した。


 私の左手が、溶けている。


「ほら見て騎士様、融解魔法よ。騎士様の左手、骨だけになっちゃった」


「ぎぃいあああああああああああああ!!やめてええええええええええ!!」


 じゅうう、という肉が焼け焦げる音がする。その肉がぼたぼたと、地面に落ちる。それが私の手であると、できることなら信じたくない。


「お次は透過魔法で・・・」


 やつは私の胸に手をあてる。するとその手が私の体の中へと飲み込まれていく。


「ひいいいいいいい!?」


「今までも何度か使ってたんだけど・・・直接見せるのは初めてね。ほら、私の手が騎士様の体の中に入っちゃったわ。このまま臓器に触れると・・・」


「うぐrgう゛ぇあpl」


「あはっ、吐くほど気持ち悪かった?」


 生きたままに臓器に触れられる感覚に、私はたまらず吐いてしまう。形容しがたいその感覚は、痛いとか気持ち悪いとか、そんな言葉で語れるものではなかった。


「どんな感じ?教えて騎士様」


「ぁ・・・、が」


「おーしーえーてーきーしーさーまー」


 ぐちゃぐちゃぐちゃ、とやつが私のお腹の中をかき回す。


「あげえええええあああああああああああああああああああああ」


「わお、聞いたことない叫び声。いい反応だわぁ。・・・あ、これ心臓かしら」


 やつの手が左胸辺りを弄る。


「これに触ったらどうなるのかしら。触るだけじゃなくてぇ、握り潰してみようかしら」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」


「ま、今はやめときましょう。それは最後に、ね」


「ぁ・・・・・・・・・・ぁあああ」


「さあ騎士様、まだまだ遊びましょう?私と一緒に・・・・・」


「ゆる・・・・・・・・・・・・・・・・・・し、て・・・・・・・・・・・」


 悪夢は終わらない。


 地獄に底はない。


 私が死ぬまで。


 私が死んでも。


 終わらない。


 やつは嬉しそうに、拷問を続ける。嬉々として、飄々として。私はその狂気をただただ受け入れる、玩具になるしかなかった。


 何があっても壊せない、何かを守るために。


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