絶望と希望と
「陛下! 異形の進行を足止めできません! 我々の攻撃が
通用しないのです!」
「・・・そうか」
王は酷く落胆した。
これまで何万との異形を追い払ってきた王であったが、奴
は今までとは次元がちがった。 強すぎたのだ。
「撤退する。 攻撃が通用しない以上、奴らに兵力を回すのは無駄だ・・・」
そう言うと、王は通信魔法で伝達を始めた。
「全兵士に告ぐ、我々は奴らに傷一つつけることができない。 全兵士は速やかに王国へと撤退し、国民の避難を最優先に行動せよ」
全兵士は転移した。
兵士が居なくなっても異形の進む速度は変わらなかった。
「急いでください! 異形はこの王国へと向かっています!」
王国では撤退した兵士達と王国を守っていた兵士達たち、
残りの兵士達による大規模な避難作戦が行われていた。
「魔法を使える方はこちらに! 」
「使えない方はこちらに!」
魔法を使える者は転移魔法で安全な場所へと避難できるのだが、使えない者はこの世界の最大の魔法浮遊船「ルエラ」に乗って避難する。
「陛下! こちらは転移による避難が完了しました!」
「陛下! こちらルエラ船船長! こちらも国民の乗船が完
了しました!」
「よし! 出航!」
この船は国民の希望の船だ。
「「「助かった〜」」」
国民も兵士も国王も皆、安堵した。
しかし、それはほんの一瞬であった。
下を見ると雲の下に、何かがいた。
「異形だ」
その瞬間、安堵の顔から絶望の顔に皆が変わった。
異形は雲から顔を出すと、大きな口を開いて船に向かって
闇の魔弾を撃ち放った。
視界が闇に覆われた。 それだけ魔弾は大きかった。
回避もできなければ、耐えることもできないだろう。
誰もが死を覚悟した時。 光の障壁が出現した。
なんとその障壁は巨大な魔弾を弾き返したのだ。
その魔弾は見事異形に命中し、異形は去っていった。
「うおおおおおあお! 何が起こったかわからないが助か
った!」
国民は歓喜の声を上げた。
「ん? なんだあの子は?」
一人の兵士が空を見上げるとそこには銀髪の少女が一人
空に浮いていた。