恋文
突然の文に、さぞや驚かれた事と存じます。
まさか私の様な身分違いの者から、此の様な文を貰う事があるとは、露ほどもお思いにならなかったでしょう。
けれど、どうしても此の胸の裡をお伝えしたく、失礼ながら、こうして筆を執った次第で御座います。
いつか御簾の向こうに見えた、其の御姿が愛おしくて堪らず、身分違いとは重々承知しておりますが、どうか今一度、麗しいそのお姿を拝見したく思い、この様な文を認めているのです。
本来ならば恋歌ひとつでも添えるべき文ではありますが、もどかしくも風流を知らぬこの身、せめて銀砂子を掃いた紙に、庭に咲いていた瑠璃色の花を添え、歌の代わりとしてお贈り致します。
私が何処の誰であるのか、詳しい事は申しません。
もし宮中でお姿を拝見する機会があれば、その時は檜扇を差し出しましょう。
御存知より