運命の日 / Branching Point of Life
…クアッドリリオの「立体画面プロジェクト」のデータが何者かに盗まれた事件について、クアッドリリオ側は社員のプログラマーが犯人だと断定しています。
様々な企業と提供して行われてきたこのプロジェクトによる損失は大きく…
「私が責任を負って退職するという話だったはずだ、損害まで負うとは聞いていない!」
「責任を負うなら必然的そういうことになる。焦らなくても、稼ぐ手筈は整えてあるさ。」
「稼ぐ、手筈…?」
青年の名はロン。
クラウンガーデンのアルダートンに生まれ、ハミングバード大学を総合成績2位で卒業し恋人や友人と共にインターネットサービス企業「クアッドリリオ(クアッド)」に就職していた。
1年ほどで彼らは優秀社員となり、クアッド最大の「立体画面プロジェクト」で活躍することとなり、その成果をあげていた。
ある日突然、朝入社したメンバーが仕事を始めようとするとプロジェクトのデータが消えているという事件が起きた。
その日入社せず、音信不通となったプロジェクトメンバーが犯人だと会社は断定し、問題の解決を図るためコンピューター全てを調べたがバックアップすら見つからず、文字通り完全に消滅していたのだった。
最重要プロジェクトだからとバックアップデータは1つしか作っていなかった問題もあり、早急なプロジェクトの再始動を始めなければならなかった。
ロンと、彼の恋人カーリーはあらゆる状況のことを考え、上からの命令でバックアップデータが取れないことを考慮し、1年かけてプログラムの全てを手書きで書き残していたためプログラミングには大きな支障は無かった。
最後に残る問題は、誰が責任を取るかだった。
メンバーは全員、CEOが認めるほどの優秀さでチームの中から誰かに責任を取らせるのは難しい問題であった。
友人のやったことに事前に気付けなかったロンは真理的な責任を感じ、メンバーに相談してCEOに自身が責任を負うと告げた。
当初の上役の話では、ただ一人退職させればいいという話だったためまともな生活が出来るのならとクアッドにいることを諦めたロンだったが退職の日に上役から言い放たれたのが、金の問題だった。
「今回の騒動で発生した損害は500万ドル、大変な額だ。会社としてもこの損害は取り戻さなければならないとは思っているが知っての通り、立体画面プロジェクトの他にもクアッドリリオはやらなくてはならない仕事が山ほどあるんだ。そこでだ、全責任を負うと言った君には損害の500万ドルを会社に返してもらわなくてはならない。」
「何、私が責任を負って退職するという話だったはずです、損害まで負うとは聞いていない!」
「責任を負うなら必然的そういうことになるだろう。まあそう焦らなくても、稼ぐ手筈は整えてあるさ。」
「稼ぐ、手筈?」
「モラリストは知ってるだろう、良心的な悪質金貸し企業だ。向こうに相談して500万ドルをなるべく早く、比較的安全なやり方で稼げる仕事を紹介してもらった。」
CEOはロンに仕事のリストが書かれた紙を手渡し、話を続ける。
「もちろん、それ以外に何か稼げる方法があるならやって貰って構わない。言っておくが、いつまでも気長に待つわけじゃない、損害は早くに解決しなければならないのは分かるだろう。そこに書いてある番号に連絡すればモラリストに繋がるから、仕事の案内をしてもらうことだ。君は優秀だったが、運はなかったらしい。」
CEOはロンの肩に手を置く。
「気の毒だが、そっちの活躍も期待してるよ、ロナルド・カドガン。」
…
メルトフォード モーニングパーク
日曜日にロンはカーリーと公園で会っていた。
「どうしてこんな事に…あなたには荷が重過ぎるわ。」
「…そんなことはないさ、方法はいくつか考えてある。」
「500万ドルよ、そんな簡単に稼げるはず無いわ…紹介されたのもどうせ汚れ仕事ばかりでしょ?私、あなたにそんなことして欲しくないわ…。」
「僕だって、こんな汚れ仕事をするつもりは無い。一番いい方法を試して、それがダメなら次の方法、成功できる方法を探そうと思ってる。君には本当に申し訳ないと思ってるけど…プロジェクトを頼むよ、カーリー。」
ロンは涙するカーリーに一時的な別れを告げ、公衆電話に向かいある場所へ電話をかけた。
「もしもし、スペンサー・コニーさんの番号でよろしいでしょうか?」
まだ働いている人間ではない為に責任を負わせるその辺は少し端折っています。
こうでもしないと物語が進まないのです笑
読みづらいのはご勘弁くださいorz