3:目覚め
2話目です……いやぁ寝落ちしてしまってました。面目ない。
次回更新、明日0時過ぎ頃……のはず。寝落ちしてなければ。
……ピ……ピ……ピ……ピ……ピ……。
近くで、規則正しくリズムを刻む音が聞こえる。
その音は何処か私を安心させるような、そんな錯覚を覚える。
このまま、もう一度、眠りに落ちれるよう……そんな錯覚を。
だけど不意に、誰かに呼ばれたような気がして……
まだ、重たい瞼を。ぼやけたままの思考を……
どうにかはっきりさせようと、大きく息を吸い込む。
少しづつ、瞼を上にあげあたりの様子を伺う。
(……あれ、そういえばここは何処なんだろう? )
当然の疑問。
微かに覚えているのは、実験に失敗し、魔力の渦に飲まれた事。
そこから脱出した事までは、しっかりと覚えていた。
……けど、そこからが曖昧だった。
ここで寝かされているっていう事は、町に着いたという事……なんだろうけども。
そもそも、此処は何処なんだか……。
どうやって町にたどり着いたか?
それに、目を覚ませば私は知らない部屋の中に居る。
……丁寧に、ベッドに乗せられて。
段々とはっきりしてきた頭が、加速し余計なことを考える。
(とりあえず、今知りたいのはここが何処だってことだよね……)
そのためには、体を起こさないと。
そう、考え体に力を入れ、体を起こそうとするが……。
上手く体に力が入らず、結局起き上がれなかった。
……。
(んー。どうしたものかなぁ)
どうして、力が入らないのか。
起き上がることができないのか。
よくよく、自身の体や辺りを見回してみると。
その原因はすぐにわかった。
私の体のいたるところに、何かが張り付けてあった。
その張り付けてある物は先ほどの『ピピピ』と音を発していた装置の様な物に続いていた。
また、左腕の丁度ひじの辺りには針と管の様な物が刺さっており、そこに液体が流れ込んでいた。
……たぶん、これらのせいなんだろう。
詳しくはわからないけど。
無理に動かしてしまっては、左腕から血が流れてしまいそうで。
色々考えた結果……ここに運んできた人がいる筈だからと自分を納得させ……
とりあえずは、人が来る事を待つことにした。
……ゆっくりと目を瞑って。
そして、その人が来るまでに対した時間はかからなかった。
きっと10分か20分ぐらいだろう。
不意に、聴こえる足音と共に……
私よりも少し年齢が上ぐらいの白い服を身にまとった女性が部屋に入ってくる。
その女性は、ぼそぼそ呟きながら、何やら先ほどの装置を確認しメモ書きをしている様だった。
そして、ベッドの近くに来て私の顔を覗き込む。
それから、髪をすくうように手で私の髪を撫でる。
真剣な顔をしながら、その女性は一言。
「この女の子……何があったのかしら。……町の入口で倒れたって運ばれてから、三日になるけど……まだ目を覚まさないなんて」
現代の医療なら、これぐらいならもう目を覚ましてもいい筈なんだけど。
そう女性は言う。
(……三日!? )
偶然聴こえた声に、私は動揺する。
……どうやら、ここに来て私は三日眠り続けているらしい。
少しだけ動揺したが、それもあり得ない事じゃないか。
そう、納得させて心を落ち着かせる。
そして、どうやら凄く心配されている様で心が痛かった為、ゆっくりと目を開ける。
そして、声のした方へ視線を向け女性と目を合わせる。
……それまで、私の髪を撫でていた女性の手が止まり
部屋の中の空気が、時間が一瞬だけ止まったように感じた。
それから、その女性は思い出したようにこちらを見返し言葉をかける。
「……あぁ、えっと!? あ、わ、私の声聞こえるかな?」
さっきまで、暖かかった声は一瞬で少し頼りなさを感じる声に変る。
その様子が、どこかおかしくて顔を綻ばせると。
「聞こえてるね……」
肩を落としながら、その女性は答え、「先生を呼んできますね」
そう、告げて部屋から駆け足で、慌ただしく出ていった。
♦
しばらくすると、これまた白い服を身にまとった男性の老人と一緒に
先ほどの女性が、部屋に戻ってくる。
男性の老人も部屋に入ってくると何やら横にある装置を見て頷いている。
その後に私の近くまでくると、目の前で手を振り始める。
……その手を、何となく私は目で追って見た。
その様子を見た老人は少し顔を緩ませ、腰を低くする。
次に、服の裾から何か棒のような物を手に手繰り寄せ、私の眼に向ける。
カチッという音とともに、眩しい光が押し寄せ、思わず目を瞑る。
しばらく、瞼に眩しさを感じたがその眩しさが消えるとすぐに目を開く。
すると、その老人の男性は嬉しそうにほほ笑み一言。
「確かに意識もはっきりしている様じゃな。もう大丈夫じゃろうて」
そう私と、横に付き添っていた女性に告げるように言葉をこぼした。
「お前さんが一番、この娘の心配をしていたようじゃからなぁ?」
クックックと笑っている老人に、その女性は「からかわないでください」
と、ただ頬を赤く染めていた。
「……さて、お前さんよワシの言葉はわかるかな? 分かればゆっくりでいいから頷いてくれんかのう?」
そう老人が言う為、まだ少し気怠く、力の入らない体で首を頷かせる。
「それはいいことじゃ…… 言葉は話せそうかのう?」
ゆっくりと息を吸い。
言葉を発するために口を開くが、上手く言葉にできず片言になってしまう。
「ダ……イジョ……ウブ……デス」
(あれ……私今までどうやって喋ってたんだっけ……?)
久方ぶりの発語だからだろうか?
思わずそう思ってしまった。
老人は、すこし困ったように笑いながら……
「ちと、まだ無理はできんようじゃなぁ。」
と頭を掻いている。
「とりあえず、今は20時もう夜じゃ……起きたばっかりだろうが、もうひと眠りして……次の話はそれからじゃな。」
それだけ老人は言って、はにかみ部屋から出ていった。
横にいた女性は、よかった……と言って、私の髪をすくっている。
その心地よさに少しだけ目を細め……次第に眠りに落ちていった……
――次の朝
朝早くから、老人の男性は私の元へとやってきてこう言った。
「さてお前さん、自分の名前は言えるかな?」
……少しだけ、あー、あーっと発声練習を繰り返し。
昨日よりも滑らかに話せる事を確認した私は、昨日はやっぱり本調子じゃなかったんだなぁ……
なんて思いながら、名前を告げる。
「私の名前はカナデと言います……すいません一つだけ質問があります。いいでしょうか?」
その老人は、頷き答える。
「カナデ……ちゃんね、あいわかった。それで質問とはなんじゃ?」
「不躾なことで失礼いたしますが、ここは何処でしょうか?」
と、私は尋ねると……
老人は答える。
「ここは、しがない町の魔学病院じゃよ……」
「いえ、そうではなく……この町は……」
その返答に見た老人は少し考えているように間をおき
「カナデちゃん……お前さんは訳ありのようじゃのう……」
と小さくつぶやいた後に、言う。
「ここは、魔法科学都市の中の一都市……『オルトスクエア』じゃよ……」
その答えに私は、ただ呆然としていた。
主人公の名前はカナデちゃんです。
フルネームはまたいずれ……。