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フェネの追跡

 さて詳細を確認していくためには、奴隷商からフェネを連れ去った狐人の情報からか。

 ファイナさんのところから街に戻った時には、夜も遅くなっていたが、奴隷商は開いているだろうか。

「セラドは帰ってくれてもいいぞ」

「何を言うておる。こういう時に助け合ってこその相棒じゃろ」

 嬉しいことを言ってくれるが、眠そうでもあるんだよな。あまり無理はして欲しくないのだが、セラドとしても気にしてはくれているのだろう。


 セラドを伴って、奴隷商へとやってきた。やはりまだ灯りがついていて、営業中のようだ。

 受付に行くと、すぐに応接室に通され、例の担当女性が現れた。

「マモル様、本日は新たな購入の検討でしょうか?」

「残念ながら、フェネについての確認だ。フェネを連れ去ったのは、狐人で間違いないのだな?」

「はい、それは間違いありません。獣人の中でもあれほど見事な尻尾をされたのは狐人の方だと」

「親族というのは、どうやって確認を?」

「フェネの名前と、年齢を知ってらっしゃいましたので」

「名前は聞いているか?」

「確かネフェル様と伺いました」

「俺はフェネの実の姉という人と会ってきた。容姿を見ても肉親と分かる人だ。その人が、フェネの一件を知らないと言っていた」

「それは親族と言えど、知らぬ事はあるのでは?」

「狐人は知人と念話できることは知ってるな? それに応答がないらしい」

「そ、それは……」

「俺としては、今こそがフェネが誘拐された状態じゃないかと疑っているんだが」

「しかし、それは……マモル様の願望ではありませんか?」

「そうかも知れないが、納得できる答えが欲しい。フェネが入荷した経緯とかは、聞けるか?」

「それは……」

 手元の資料に視線を落とす。

「近くの森で保護と。名前から冒険者として登録されていることは確認できましたが、その、記憶が確かで無かったようで……」

 何やら怪しい返答になってきた。


 近くの森というのは、ラミアたちがいる森か。そこで発見されたが、名前以外の記憶はなく、所持金などもなかった為、奴隷商に引き取られたと。

 身よりのない者が奴隷としてやってくるケースは多いので、それに準じた対応をしたらしい。

 フェネ自身、反抗的な態度もなく、奴隷になることも受け入れていたので、最低限の礼儀を教えて、商品として販売する事になったと。

 あの日が彼女にとって初めて商品として紹介された日で、俺の前にも数人が見たとのこと。俺が手付けを払って以降は、誰にも会わせてない。

「その狐人達はどうやって、フェネが奴隷商にいることを知ったんだ?」

「それは例の連絡法と伺って、そうなのかと……」

 詳細は不明か。

「迎えにきたのは一人?」

「いえ、三人ほど。すべて男性で、見事な金色の毛並みをされてました」

「群れない狐人が三人……それはまた不自然な感じもあるな。歳は?」

「四十くらいの方が一人と、二十歳前後が二人。父親と兄弟とのことでした」

 こんなところか。手がかりらしきものは少ないが、相手を疑わずに引き渡したのも入荷の特殊性から仕方ないと。

「わかった、ありがとう」

「いえ、あの、今回のことは、できれば内密にお願いします。次の購入の際にはサービスさせていただきますので、ご贔屓にお願いします」

 深々と頭を下げる女性を置いて、俺は店を後にした。


「結局寝てるしな……」

 奴隷商で話を聞いてる間も静かだなと思っていたら、セラドはすっかり寝入っていた。仕方なく負ぶって宿へと戻る。

 ベッドに寝かせて外套を外す。上着くらいは脱がせた方がいいか。頭からかぶる形のローブを捲り上げて脱がす。起きる気配はない。

 麻の薄手の服を小さな膨らみが押し上げている。

 エリザベスと夜を共にしてから、意外と時間が掛かっているな。奴隷を買って事を済ますとか、ラミアとの子作りとか、機会はあったような気もするが、他に優先することがあって逃してきた。

 目の前には無防備に眠る少女。年上だけど、年下にしか思えない。幼すぎると思いきや、それなりに発育はしているようで。

「マモル、駄目じゃ……」

 ビクッとその手を止める。寝言……か。むにゃむにゃと何か言いながら、姿勢を変えている。

「寝るか」

 このまま見ていると、手を出してしまいそうだ。もうベッドを移動するのも億劫だ、添い寝くらいセラドも許してくれるだろう。

 俺はそのまま眠りに落ちた。


「ワシはどうしたいんじゃろう」

 マモルの寝息が規則正しくなっている。ここ数日は色々と動き回って疲れてもいるだろう。

 欲望に従って行動しているようで、妙に紳士的な部分のあるマモル。

 一人寂しく街をさまよい、行く宛もなく、路銀も尽きたときに出会った男は、乱暴そうで優しい。

 好きか嫌いかで言えば、間違いなく好きで、一緒にいて楽しい。女に見境ないようで、相手の事も考えてくれる。いい相棒だと思う。お金も一気に増えて、私にも惜しみなく渡してくる。

 ワシは本当に役に立てているのか。もし、欲求不満で相手が必要なら……。

「無理かのぅ」

 自分の意気地のなさは分かってる。さっきも思わず拒絶した。マモルが望むなら、応えたいとも思ってはいるのに……。

 マモルに寄り添い、その温かさに身をゆだね、再度訪れた睡魔に身を委ねた。

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