暴食と料理
「しかし僕の魔剣が暴食なんだろう?」
エルフの王国の首都へ向かいながら、何気なく言った一言に皆の視線が集まった。
「気づいておらぬのか?」
「意識はしてないんだろう」
「苦労するのぅ、フェネ」
「やりがいはあります」
「え、えっと……」
料理を作ることの多いフェネを皆で慰めている状況に、僕は一人取り残される。
「ソナタ、暴食とは違うのかもしれぬが、食には厳しいぞ?」
「残さず食べてはくれますけどね」
全然意識していない部分の指摘に、戸惑ってしまう。
「味が気に入らなかったら、態度にでてるんだよ。他の食材と合わせて掻き込んだり、食べた後に水で飲み込んだり……」
そ、そうだっただろうか。
「逆に好きなものは良く噛んで食べておるしな」
「フェネがどれだけ味付けにこだわっているか、分かってないだろ」
「おかげで美味しいものを食べられるがの」
「フェネ……そうなの?」
「まあ、色々と試すようにはしてます。どうせなら、喜んで食べて欲しいので」
「ありがとう……」
僕は思いの外、グルメだったらしい。確かにこの世界の食べ物は、味付けが薄かったり、塩味がきつ過ぎたり、食べるのに苦労する事はある。
保存するための冷蔵庫とかがないので、野菜は萎れていたり、保存食は塩辛かったりする。仕方ないと思って食べてはいたが、筒抜けだったみたいだ。
「気になさらないでください。皆も美味しく食べたいでしょうし」
「うむ、単に自覚がなかったのかと、驚いただけだ」
食か。
確かに大事なもののはずなのに、特に気にしてもこなかった。
これも恐怖心を抑えていた弊害なのか。
「そういえばエルフの村の野菜は、シャキッとして美味しいよね。何か工夫があるのかな?」
エイレスが手元のボードに書いて示す。
「鮮度を保つために、水の精霊や氷の魔法で工夫があるそうです」
「なるほど」
「今度覚えてみますってさ」
エイレスはやる気を見せていた。確かに冷やす魔法などで鮮度を保てると、食の幅は広がる。
それが負担にならないのであれば歓迎だ。
「フェネと協力して進めてくれたら助かるかな」
日が暮れて僕達はラミアの元へと戻る。エイレスの件があったので、かなり久し振りという感じだ。
「いらっしゃいませ」
いつもの微笑みに癒やされる。
下半身が蛇の魔物の姿だが、思ったよりも怖くは感じない。ラミアの人柄を分かっているからだろう。
「どうかなさいましたか?」
「いや、いつも待っていてくれてありがとう」
「え、あ……」
思わず出た言葉にラミアは動揺を見せた。
ラミアの宿の料理も鮮度は良く、丁寧な作りで僕は安心して食べていられる。
「ラミアもその、僕への料理って気を使ってる?」
「それは当然ですよ。私は食事の必要がないので、人間に合わせた物を考えてますし」
やはりここでも僕の食は守られていたようだ。
「そうか、ありがとう」
「いえ、私も喜んで食べてくれると嬉しいですし、昼間の暇な時間を有意義に過ごせますから。お互い様ですよ」
ううーん、それだと僕が一方的に得しているような……でも、家にいる間はそれが当たり前だと思っていたな。母さんは毎日のようにそれをやってくれていたわけで、ちゃんと感謝はしていなかった。
「ん……」
何か記憶の奥に引っかかるものを感じたが、それが何かまでは思い出せなかった。
その前に衝撃的な報告があったからだ。
「ちゃんと約束も果たしてもらいましたし」
下腹部を擦りながら笑いかけられた。
「ふむ、確かに」
セラドの診察により、ラミアの中に新たな命が宿っているのが確認された。
「え、えっと、その、おめでとう」
「大丈夫ですよ、マモル様。ラミアは元々母子で育つもの。負担はかけませんので」
と言われても落ち着かない。僕はまだまだ子供で、自分に子供ができるとか考えてこなかった。
そりゃあ、やることはやってきたし、ラミアもそのつもりだというのは、聞いてきた。
ただ僕に覚悟ができていないだけだ。
「私も父親は知りません。母ははっきりとは言いませんでしたが、母が殺した男の可能性が高いです。それを考えれば、現状は恵まれすぎてますから」
「う、うん」
「ふふっ、生まれるのはまだまだ先ですから、今日はゆっくり休んでくださいまし」
更新遅くてくてすいませんorz
新エピソードを始めつつ、継続できるように頑張ります。




