表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/46

動けぬ自分とやるべきこと

「ここにいましたか」

 森の中でうずくまっていると、聞こえてきたのはフェネの声。獣人の感覚と偵察術による追跡は、僕の逃亡は許さないだろう。それ以上に、モンスターがいるかもしれないこの森を、逃げ回る勇気は僕にはなかった。

 木を背にフェネを振り返る。

 いつも通りの美しい顔に、少し心配げな表情。

「大丈夫ですか、マモル」

「ああ、元に戻っただけだからね。これが本来の僕だ、恐怖心を魔剣の力で抑えていただけ。もう戦うどころか、剣を握ることすら怖い」

 震える手をフェネに見せる。

 フェネはそんな僕にふっと表情を和らげた。

「そうですか、良かったです」

「ああ、もう僕に縛られる必要はない。どこでも自由に行けばいいよ」

「はい」

 そういってフェネは僕の側に腰を下ろした。

「マモルはいつもどこか無理をしてるのは感じていました。その歪みの原因が分かって良かったです」

 フェネは僕の肩を抱き、頭を撫でてくれる。優しくゆっくりと。温かな感触に、強ばっていた心までほぐされてしまいそうだ。

「僕がフェネを助けられたのも、魔剣があったから。今の僕じゃもう君を守れないんだ」

「ならこれからは私が守ります。セラドさんやレイラさんもいます」

「僕には守るような価値はないよ……」

「マモル、いくら強くても、私を助ける事はできませんでしたよ。私を助けたいとマモルが思ってくれたから、助かったんです」

「でも魔剣が恐怖心を食べていてくれたから……」

「マモルは自分が動けなければ、別の手段をとってただけだと思いますよ」


 フェネは一度言葉を切って、僕と向かい合う。

「今、かつての私と同じ様な境遇になりそうな子がいます。マモルにそれを見捨てられますか?」

「あ、う……」

 あの決闘は僕の負けとして、処理されただろう。そうなるとエイレスは、シュバインに連れ去られるのかもしれない。彼は傲慢プライドの持ち主で、一方的な愛情でエイレスを見ている。助けた方がいいのだろう。

「でも、僕には戦うことは……」

あるじよ、再び封じればよい。お主の恐怖心は人には大きすぎる』

「駄目だ、それじゃシュバインを相手にできない。レイラでも剣技では勝てるだろうが、切られたら精神に影響を受けるんだろう?」

傲慢プライドに切られれば、己の力を過信する。そこには隙が生まれるだろう』

「僕がやらないと……」

「はい、マモルならそうしたいと思うはずです。そこが私がマモルを好きな理由ですから」

 フェネは僕を引き上げで立たせる。

「セラドさん達がこちらを探しています。合流しないと」


 フェネによって決断させられた僕はまだ恐怖に縛られたままだ。魔剣には魔剣の持ち手でないと対抗できない。かといって、魔剣があれば勝てるという訳でもない。

 あの時点で技量では勝っていたと思う。ただ恐怖が僕の心を縛る。そんな状況では、傷付く事を恐れる心では、到底勝てるものではないだろう。


「ふむ、呪いが解けておるな」

 一通りの説明を受けたセラドは、それを確認する。セラドとの出会いを思い出し、少し笑えてしまう。

「ソナタは呪われておる!」

 思わず口に出し、セラドに睨まれた。その顔は赤い。強引にもほどがある接触だったが、それが今に続いていた。

 おほんと一つ咳をして、セラドがあの後の事を話してくれた。

「決闘自体はシュバインの勝ちとなったが、そこに議論の余地はある。あの時点でマモルの勝利は決定的じゃったからな。エイレスはシュバインに連れて行かれたが、再戦する事はできるはずじゃ」

「でも僕にはシュバインには勝てないよ……」

「ならば私が鍛えてやる。戦えるようになれば、あやつ程度マモルの敵じゃない」

 レイラが名乗りをあげる。それしかないのか。僕が僕として戦い、シュバインに勝って、エイレスを解放する。

 僕はレイラから特訓を受ける事になった。



「ここまでとはのぅ」

 あれから数時間、何とか魔剣は握れているが、レイラと正対するだけで膝が震え、切っ先がブレる。

 レイラの一撃で剣は飛ばされ、何度も拾いにいく。

「たらたらするな! 拾ってる間は安全だと思ってるだろう!」

 レイラは声を張り上げ、僕にプレッシャーを与えてくる。その声にも体が強ばり、鉄拳を受ける羽目になる。

 ガラハド流のスパルタを思い出す。あの時は感じなかった恐怖によるプレッシャーは、僕の心を苛んだ。

「駄目だ、やっぱり僕には無理だよ……」

「くっ」

 レイラが怒りに顔を赤くして、僕はそれを見ることもできなかった。


 レイラによる訓練はそこで中断となり、僕は一人で素振りを続ける事になった。

 それをセラドやフェネが見ていてくれる。素振りではちゃんと体も動くようにはなった。人に向かうと駄目なのだろう。

「セラド、エルフ達の居場所は分かる?」

「この辺りの警備隊じゃから、詰め所も近くにあるばずじゃ」

「私が探してみます」

 フェネは言うが早いか、森の中へと姿を消した。自分はでも動けず他人を頼るしかない。そんな自分に嫌気がさす。

「ソナタはソナタのやれることをやっておるよ。ワシも普段は見守るだけじゃしな。どうなったら、どうフォローするか。それをしっかり考えておれば、意外と体は動くものじゃ」

 僕はそんな意見を聞きながら、素振りを繰り返した。

更新ペースが落ちて申し訳ないです。

なかなか筆が進まず苦戦中。

この作品で一番書きたい部分でもあるので、時間をかけるかもしれません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ