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装備ができるまでの仕事

 翌朝、ラミアの宿から妖精の輪を使って『レスニア』の街へと戻ってきた。朝からなかなかの活気で、人が行き交っている。

 セラド達のローブはまだのはずなので、この街でやることを見つけなければならないだろう。

 兵の詰め所へ行ってみると、そこもまた人だかりになっている。討伐依頼もそれなりにあるが、近場のモノはなさそうだ。

 終了となっているモノの中に、サラマンダー討伐もあった。流石にもうしばらくは見たくもないかな……。

「見つけたぜ、貴様!」

 既視感デジャヴを覚える。この場合は既聴感か。あの時の盗賊に生き残りがいたか、全員奴隷として売ったはずだが。いや、強欲グリードはいるはずだが、奴はこんな下衆な言葉は話さないだろう。奴の底知れなさは相手にしたくない雰囲気だった。

 色々と考えた末に振り返ると、昨日の酔っ払いだった。酔ってた割に記憶できていたらしい。

「紅の傭兵団って知ってます?」

 詰め所の兵士に聞いてみる。

「この街で一番のクランだよ。仕事を達成する数も多い。この前のサラマンダー討伐を果たしたのも彼らだよ」

 サラマンダー……まさか、こいつらが追いやったせいで、ノームの村が危険になったんじゃないだろうな。


「おい、人を無視して話してるとか、調子乗ってんのか?」

 酔ってるときと変わってない。面倒な奴だな。フェネが可愛いのは仕方ないが、目立つのも辛いな。

「そういえば、クランって何です?」

「冒険者がパーティーを越えて協力する為の組織だ。だいたい30人から100人くらいのグループで、紅の傭兵団は100人近くいるよ」

 この兵士も意外と呑気な感じだな。こういうことは多いのだろうか。

「いい加減にしろよ、てめえ」

「用件は何なのですか? まさか朝から女の子のお尻を追いかけたい訳じゃないですよね?」

「なっ」

 とりあえずフェネへ矛先が向くのは避けたいところだ。

「あ、当たり前だ。俺は、紅の傭兵団として、ケジメをつけに来たんだよ」

「俺はパーティーの仲間に、絡むのはやめて下さいと言っただけですが?」

 この場には冒険者も多い、こちらの正当性を主張すれば下手な事はできないだろう。

「てめえみたいな旅人風情に、紅の傭兵団が馬鹿にされて黙ってられないんだよ」

 話が噛み合ってない。いや、噛み合ったら負けるから、うやむやにしてるのか。男の背後には、フル装備の戦士が二人。それなりに強そうではある。正直、目の前のこいつが一番弱そうなんだが。

「何が気に障ったのか、教えてくれますか?」

「紅など田舎者の集団だと言っただろうが」

 田舎者呼ばわりされたのは、こちらのはずなんだが、都合のいいように記憶が変わってるのか。

「そう言ったつもりはないのですが、誤解を与えたならすいません」

「ゴメン済む問題じゃねえんだよ!」

 男は言質を取ったとばかりに殴りかかってきた。顔を狙った拳に対して、頭を下げて額をぶつける。さすがに響くが、頭は意外と硬いものだ。拳の方がダメージは大きいだろう。

 しかも端から見ると頭を下げた相手を殴って見えるオマケ付きだ。

 男の拳は革の手袋に包まれていて、やはり20レベルの力はそれなりだ。額が裂けて、血が流れる。

「マモル!」

 駆け寄ろうとするセラドを手で制し、相手の男を見つめる。男は手の痛みにだろう、顔をしかめながら、俺に向かって言い捨てる。

「これに懲りたら偉そうな態度はとるなよ!」

 踵を返して、歩み去った。


「ま、マモル」

 改めて歩み寄ったセラドが治癒魔法をかけてくれる。フェネは男を射殺すくらいの視線を送っていた。

「あそこまで下手にでることもないだろ」

 レイラも腹を立てているみたいだ。

「さてな、痛手はどちらが大きいか。俺としてはかなり勝ったと思ってるんだが」

「何のことじゃ?」

「紅の傭兵団が、ちゃんとした組織なら、公の場で旅人に喧嘩を売る奴をどう思うかって事だよ」

「あんた、なかなか肝が据わってるな」

 先ほど紅の傭兵団の事を聞いた兵士が、カウンター越しにこちらに話しかけてきた。

「実際、どうなんだ。大きな組織は、下っ端が暴走しがちだろ?」

「確かに団長は凄い人だが、末端の質はな。さっきの奴も多少の実力はあって、先のサラマンダー討伐でも三匹も撃破したそうだが」

「一人で?」

「いや、さすがにパーティーでだよ。さっきもいた戦士達と、魔道士に神術士。バランスのとれたパーティーで仕事はこなしてる」

 正直、その程度かと思わなくもないが、うちのパーティーが優秀過ぎるのかもしれない。


「で、あんたらは何をするんだ?」

「装備の新調に時間が必要だから、二、三日で受けれる仕事がないかと思ってね」

「レベルは?」

「俺が16で、平均が14かな」

「なるほど、街道の盗賊狩りとかはあるけど、発見に時間がかかるからな。魔物討伐なら、森の方でサラマンダーの残りか、東の砂漠でサソリとかかな」

「サソリ……」

「大体2mくらいで、ラクダなんかを襲いやがるから、定期的に狩る必要があるんだ」

 セラドの解毒とかがあれば、万が一でも大丈夫か。少し砂漠を見てみたいというのもある。

「サソリを倒した証拠は?」

「しっぽの先端か、ドロップ品の毒針だな」

 同じモノのように聞こえるが、別なのだろう。

「ありがとう、一度行ってみるよ」


 街の東の出口から出ると、枯れた大地が広がっている。砂漠とはいうが、砂が敷き詰められた状態ではなく、岩がゴロゴロしている感じだ。ところどころにサボテンが見える。

「ふむ、あれなら採取してもよいかの」

 ふらふらと引き寄せられるセラド。サボテンは意外と栄養価が高く、食料にされたりするが、油は取れるんだろうか。毎朝の爆発にもめげず、分かってきたと豪語するセラド。報われる日が近いことを祈ろう。

「やっぱり、精霊の力はないみたいだね」

 ドリスも2mほどのサボテンに近づいて調べたようだが、やはり妖精の輪は作れないらしい。


「マモル、あの辺に生き物の気配」

 フェネの超感覚が、獲物を見つけたようだ。既に新しい弓を手に、警戒を強めている。

「私のコレのデビュー戦ね」

 レイラも嬉しそうに抜刀する。赤い刀身が、太陽の光にキラキラと輝いて見える。

 現れたのは巨大なサソリ。全長2mで、尻尾だけでも1mはありそうだ。それに大きく見えるハサミ。戦う為の生き物といった印象だ。

「ハサミで掴まれると、ヤバいな。尻尾が避けられなくなるぞ」

 体の表面もかなり堅そうにみえるが、果たしてどうなのか。

 まずはフェネの矢が、ハサミの付け根に突き立つ。その射速が明らかに早くなっていた。当然、威力も増しているだろう。

 こちらを認識したサソリが迫ってくるのを、レイラが待ち受ける。健在な方のハサミがレイラに向かってくるが、それを盾で受け止め、剣で切りつける。赤い刀身は、攻撃の際に発熱するらしい。じゅわっという音と共に、堅そうなハサミに食い込んだ。

「臭いな」

 焼けた臭いは、香ばしいとはいかず、なかなかに焦げ臭い。しかし、威力はさすがで三度ほどの攻撃で、ハサミを切り落としていた。尻尾の動きはそれほど鋭くはないが、毒を持っている。慎重に進めるべきだろう。

「!?」

 そう思った矢先に、毒のある先端部分だけが宙を舞っていた。振り返ると杖を構えたエイレスの姿。攻撃手段のほとんどを失ったサソリは、そのまま撃破されてしまった。

「サラマンダーより弱いな」

「いや、装備が良くなってるからたろ。前の剣じゃハサミを切り落とせ無かったと思うぞ」

 そうかなと小首を傾げるレイラだった。サラマンダーとの戦闘でレイラは4Lv上がって14まできていた。そうした底上げもあるのだろう。

「油断さえしなければ、ちゃんと稼げそうだ」

 フェネの探知能力と、パーティーの戦闘力。やはり、うちの仲間は頼りになります。


 エイレスの出したボードに、フェネとレイラの目つきが変わる。それぞれに獲物を探し始めた。

「尻尾の数でご褒美……じゃと」

「勝手に決めて盛り上がられても困るんだが……というか、エイレスって意外と計算高いな」

 既に一つの尻尾を確保し、切り落とす事はできない矢と、尻尾に近づきにくい剣を相手に、遠距離から切断できる風魔法は有利だろう。

 それに気づかず勝負を始めた二人は、後でそのことに気づいて歯噛みする結果になった。

 おかげで今夜はエイレスにご褒美することとなっていた。

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