ダンジョンのある街へ
さてダンジョンのある街までの旅である。距離としては徒歩三日。途中には宿場町もあるらしいので、野宿することはないらしい。街道も整備されていて、馬車なども通っているとの事。
旅と言うには近場かもしれないが、俺にとっては初めての遠出になるので、気を緩めるのは良くないだろう。
「こんなの旅に入らないよ」
フェネは幼い頃から旅を続けているので、慣れた感じだ。セラドも村から出てくる時にある程度こなしている。
レイラは街から出たことがないらしいので、俺と同じ様な緊張感を感じた。
そんな感じで街道を進んでいたが、たまに馬車に追い抜かれたり、やってくる旅人とすれ違ったりで、人通りも少ない事はない。
徐々に緊張はほぐれて、夕暮れ前には最初の宿場町にたどり着いた。
「こんなもんか」
「街道沿いの移動なんて旅じゃないって」
フェネの軽口も今なら頷けそうだ。宿も思ったよりしっかりしていて、少し料金は高めだが安心して眠れそうだ。
二部屋を借りて、レイラとそれ以外で泊まる。普通は男女で分けそうなんだが、いいのだろうか。
「やっぱり二人ずつの方が自然じゃないか。レイラも初めての旅で不安だろうし」
「わ、私は大丈夫だ」
レイラはまだ遠慮が見えるから、意見は無視する。
「二日泊まるんだし、交互なら問題ないだろう?」
「ううー、仕方ないかなぁ」
「まあ、よかろう」
「じゃあ、今日はフェネが俺と一緒で、セラドかレイラとね」
と割り振ると、セラドが泣きそうな表情になった。そんなにか……嬉しい反面、少し引く。
しかし、ここは心を鬼にしてフェネと休む事にする。レイラとセラドにも仲良くなって欲しいからな。
その夜はフェネとそれなりに楽しんでから眠る事ができた。
旅程二日目、天気も晴れてて、問題はなさそうだ。そう言えば、雨に降られた記憶はないが、どうなんだろう。
「この辺りは雨は降らないのか?」
「雨は雨期にならんと降らんな。その時期は外出が面倒になるのじゃ」
「雨期があるのか。一年は何日で、雨期はどれくらい?」
「一年は365日で、雨期は三ヶ月ほど続くのぅ」
俺とセラドの会話をレイラが不思議そうに見ている。俺が異世界人と知らないからな。秘密にする必要はなさそうだが、教えていいものか。過去にも例はあるようだが、そんなに有名な話でもなさそうだしな。
などと考え事をしていると、辺りに人の気配が消えた。
「そこの冒険者、大人しくしろ!」
街道沿いの丘の上から、盗賊が五人ほど現れた。街道沿いでも襲ってくるものはいるのか。
「セラド」
「Lv5前後、雑魚じゃな」
フェネとレイラにも準備はさせつつ、俺は前に出る。
「相手の力量くらい計れ。今なら見逃してやる」
「なっ、この若造が、生意気な!」
先頭の一人が切りかかってきた。それと同時に、他の盗賊も動き、フェネ達も動き始めた。
盗賊の剣を左に弾きながら、そのままカウンター気味に刀身を当てる。一撃で意欲を奪い、次へと向かう。
二人目はこちらの動きを待ちかまえるように剣を構えたので、それを左手で打ち落としながら、袈裟切りに振るう。腰が引けた相手でも、僅かにでも切れればそれで終わる。
その間にフェネは、盗賊一人に矢を射掛けて、肩を撃ち抜いている。レイラの方は初めての実戦に戸惑いを見せている。しかし、ここは任せる方がいいだろう。セラドがついてるし、危ない事もないだろう。
フェネに射抜かれた盗賊を軽く撫でて、意欲を刈り取り、最後の一人に向き合った。
「相手の力量は分かったか?」
「くそっ」
頭と見える男は、手下を見捨てて逃げ去った。
振り返るとレイラの対する盗賊が切りかかるところだった。それをレイラは難なくいなし、返す刀で切りつける。さらにもう一太刀浴びせて動きを封じ、止めの一撃だけ間に入って食い止めた。
殺させても構わないが、人を殺すのは負荷もかかるだろう。レイラは練習と違って、かなり息が荒くなっている。
「わ、私……」
「よくやったよ。まずは落ち着け」
そう言いながら俺は盗賊に薄く傷を付けてから、ロープで縛る。
「勢いで捕まえたが、これどうしたらいいんだ?」
「宿場町の詰め所に届ければ、街に戻った時に報酬をくれるはずだよ」
フェネが答えてくれた。むさいおっさん四人を連れての旅は、華に欠けるが仕方ない。貴重な飯の種だしな。
盗賊達は昼飯抜きだったが、文句も言わずについてきた。まあ、魔剣で切ってるから当然なんだけど。
宿場町で引き渡し、名前を伝えると、引換証を渡された。大きめの街で兵の詰め所に行けば、換金してくれるそうだ。
宿場町につく頃には、レイラもすっかり落ち着いていた。色々と考えてはいるようだが、実戦を経験したことを糧にしてくれるだろう。
夕食を四人でとる。折角だから土地の物を注文してみた。芋を蒸かした感じだったが、甘みもなくて微妙だった。普通に焼き鳥などのメニューにすればよかったと後悔する。
「さて、今日はフェネと俺の番だったか」
「なっ!?」
セラドが過剰に反応するのが可愛い。その頭を撫でてやる。
「冗談だよ、一緒に泊まろうな」
「し、知らん!」
「え、じゃあフェネと泊まるか……」
セラドが腰にしがみついてきた。うん、可愛いけど、かわいそうだったな。
セラドを伴って宿へと入る。最初は拗ねていたセラドをあやすのも、中々に楽しい経験だった。その後は結構激しく求められてしまったが。疲れが残らなくてよかった。
三日目は特に何も起こらぬまま、夕暮れ頃にダンジョンのある街『ベラド』へと到着した。
街の規模としては、最初にいた領主の治める『カンプラン』に比べると半分ほどだが、活気はあるようだ。冒険者が集う街というのもあるだろう。
メインストリートからは少し外れた宿へと足を運んだ。あまり騒がしくない店で雰囲気は良さげなところ。少し値ははったが、落ち着ける宿がいい。
一階は食堂になっているので、そこで夕食をとる。今日は変なことを考えず、トンテキにしておいた。ソースなどはなく、塩胡椒のみの味付けだったが悪くはない。
これからしばらくの滞在になるが、レイラだけ別の部屋というスタイルは変わらなかった。レイラと仲が悪い訳ではないが、夜は別である。
朝からはダンジョンに挑戦するということで、夜は控えめに寝る事にした。それぞれ一回ずつしか可愛がってない。というか三人で寝るのが普通になってるな……。




