表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/46

嫉妬の影を追って

 朝を迎え、横でこちらを見ていたフェネと目が合う。

「おはよう」

「おはようございます、マモル」

 にっこりと微笑まれる。朝から幸せな気持ちになれた。隣のベッドではセラドが髪を梳いている。その下着は昨日買った上下、淡い青色で幼く見えるセラドには似合っている。こちらの視線に気づいたセラドは慌てて今までの下着を身につけた。その羞恥心が、次に脱がすときの萌えポイントになっている事をセラドは知るまい。

 セラドを向いているのに気づいたフェネに引っ張られ、振り返ると口付けされた。

「私もちゃんと見て下さい」

「もちろんだとも」

 赤の上下を纏ったフェネは、情熱的な印象を強めている。スポーツブラのように胸全体を覆う感じではあるが、谷間は深く強調されていし、全体的にもボリューム感が増していた。

「さて、俺達も準備するか」


 宿を出て森へと向かう。フェネは、嫉妬エンヴィの呪いで記憶や感情を封じられている間の事も覚えているという。

 現場にいけば更に思い出す事もあるかも知れない。

 あとはラミアやリザードマンの話も聞いておきたいところだ。

 フェネが保護された場所はだいたい聞いている。フェネ自身が覚えている部分もあるので、だいたいの場所にはやってこれた。

 獣道からも少し離れ、大きめの木が立ち並んでいる。そのうちの一本、根元に大きなウロができた木にやってきた。

「ここか……」

 中を覗いてみると、少し空間になっていて、ヒト一人が入るには十分な広さがある。

「一応、入ってみてもらえる?」

「はい」

 フェネは素直に入ってくれた。それを少し離れて見てみると、その姿は確認できない。

「よく見つけられたな……フェネ、中で少し動けるか?」

「はい、動いてみますね」

 ガツとかゴツっといった音が聞こえるのは、部分鎧があたっているのか。それなのに外から見たら、全然変化はなかった。

 ウロへ近づいていってフェネに声をかける。

「ありがとう、少し分かってきたかも」

「外から見てわからぬのなら、見つけた者が怪しい訳じゃな」

 さすがセラドは分かっている。


 ラミアに会いに行ってみると、嬉しそうに迎えてくれた。

「私に会いに来てくれるのね、嬉しいわ」

「ラミアがおかしくなった時の事を調べようと思ってね。その攻撃的になった最初の頃は覚えてる?」

「あの時の事ですか。最初はいつだったかしら、半年くらい前かも知れないわ」

 思ったよりも昔なのか。でも逆に旅で立ち寄ったというより、近くの者の犯行と言えるか。

「冒険者に攻撃されたのか、何かに呪われたのか……始まりはおぼろげなのよね」

 フェネも気づいたら森のウロにいたらしいので、前後の記憶を失う何かがあるのだろう。

「他に森でおかしくなった魔物とか動物とかは聞かないか?」

「そうですね、私は知らないです」

「やはり長老とかが詳しいのか」

「リザードマンの情報は、長老が管理されているので、リザードマンの行動範囲の事は良く知っておられます」

 なるほど、やはり会っておいた方がいいだろう。


「これはマモル様、ようこそおいでくだされた」

 長老も俺の訪問を歓迎してくれるようだ。

「俺、何かしたか?」

「人間はリザードマンと見ると、闇雲に攻撃してくる者も多いのです。マモル様は、ちゃんと会話してくださいます」

「ラミアの紹介だからな。俺も初めが違ってたら、襲ったかもしれないぞ」

「なればこそ、会話できる人間は貴重なのですよ。誤解さえなければ、わかりあえると証明になりますから」

 そういうものなのか。

「こちらの本題としては、ラミアの様に暴れたり、様子の変わった動物や魔物がいないかって事なのだが」

「なるほど、その調査を行ってくださると。我々としても協力したいのですが、そのような話はありませんな」

「この辺りではラミアだけか」

「左様です。お役に立てず申し訳ない」

「いや、貴重な情報だ。他の魔物は狙われなかったのなら、条件は絞り込める」

「そういうものですか。マモル様、ラミア様を狂わせた相手、是非とも痛い目に遭わせてやって下され」

「ああ、努力しよう」



 街に戻って情報を整理する。

 森で被害に遭ったのは、フェネとラミア。ラミアは半年も前で、フェネはここ一月ほどの話だ。その間、他の被害者がいないのは、狙う目標がいなかったからか。

「その魔剣、嫉妬エンヴィというからには、他人を妬む性質があるのよな?」

『そうだな、自分より優れた者を貶めたいという願望が強い者が所有者に選ばれるだろう』

「そうらしい」

「となると、犯人は女性の可能性が高いやもしれぬ。フェネもラミアも見た目が優れておるからな」

「セラドも十分可愛いよ」

「しょ、しょのような事を、いってるのでは、ない!」

 動揺するセラドは更に可愛い。

「まだ事例が少ないゆえ、先入観も危険かもしれん。さらなる情報は必要じゃ」

「となると、奴隷商の方か」



 夕食後に奴隷商を訪れた。客でもないのに、頻繁に通って迷惑じゃないだろうか。

「マモル様にはお世話になってますので、迷惑だなんて」

 担当女性はそういうが、内心を見せないのが営業の勤めだろうからな。

「何か情報はありましたか?」

「少しだけ。劇団の花形スターが、表現力に陰りが出て人気が落ちたとか、娼館の人気者が一気に零落したとか。共に性格が暗くなり、私生活から変化が大きかったようです」

「ふむ」

「周りからすると、人気が落ちて性格も落ち込んだと思っているようですが、時期を調査すると逆のようで」

「よく調べたな。その人に会うことはできるか?」

「はい、実のところ、この奴隷商に引き取られています」

 スターの方は、酒に荒れて暴力沙汰に。娼婦の方は、客が付かなくなって売られたらしい。

「では、会えるのだな」

「手配してありますので、こちらへどうぞ」

 俺が来た時点で準備を進めていたらしい。この担当女性、かなりできる人なのだろう。それだけに、ネフェルに騙されたのが悔しいのかもしれない。


 案内された部屋には、二人の女性が待っていた。二十代半ばで、その顔立ちはかなり綺麗だ。ただその表情は暗く見え、覇気が感じられない。初めて会ったときの、フェネを思い出させた。

「体をあらためても良いか?」

「それが必要なのでしょう? 構いません」

 担当女性は、深く追求せずに応じてくれた。劇団スターは、右の乳房の下に、娼婦は腰の背中側に例の紋様が浮かんでいた。

嫉妬エンヴィの紋様に間違いはない』

「彼女達を以前の状態に戻したいが、信用してくれるか?」

「私共がマモル様を疑うことなどありませんよ」

 どこまで本気かわからないが、魔剣を抜いても慌てた素振りは見せなかった。呪いである以上、解呪した方が紋様自体を消せるのだろうが、グラトニーいわく神術士でもLv50は必要だと豪語している。

 魔剣の刃先を少しだけ当てて、嫉妬エンヴィの呪いを上書きする。すると二人の瞳に生気が戻ってきた。

「わ、私は……」

「ああ、こんなっ」

 二人とも自分の置かれている状況に表情が崩れた。もう大丈夫だろう。

 担当女性は目の前で起こった事に、目を見開いてはいるが、非難の色は見せていない。

「貴方が私を」

「あの変な感覚から解きはなってくれたのね」

 自分たちが全裸であることを気にも留めずに、俺へと迫ってくる。互いに人気のあった二人、元々綺麗だった顔に、表情が戻った事で魅力がかなり増している。

「私が既に商品であることは理解していますが、できればこの方にお礼をさせて下さい」

 娼婦だった女性が、担当に願い出た。

「私も、是非に」

 劇団スターも瞳を潤ませ、懇願を示した。担当女性はそれを受けて、こちらを向いた。

「マモル様がよろしければ、彼女たちの願いを聞き届けてあげてください」

 俺に決定権が委ねられていた。俺は思わずセラドとフェネを見てしまうが、二人は半眼でこちらを見つめていた。

「ソナタについていれば、覚悟は必要じゃ」

「わかってます、独占できる方ではありませんから」

 二人とも顔と言動が一致してない。でもそれは妬いてくれている裏返しでもあるので、嬉しかったりもする。

「では二人は宿に戻っていてくれ」

「……わかったのじゃ」

「その分のご褒美はありますよね?」

 二人は渋々ながらも俺を許してくれた。その分、後で可愛がってやるしかない。

「それでは、こちらに部屋をご用意します」


 奴隷商にはそうしたニーズもあるのか、豪奢なベッドが用意されていた。

 一流の娼婦はもちろん、劇団スターも超絶な技量の持ち主で、俺は翻弄され続ける羽目になっていた。

 この世界では枕営業が当たり前で、花形となるとその腕も壮絶を極めていた。俺は魂ごと抜かれそうな濃密な夜を過ごす事となった。



 朝、宿に戻ると二人に迎えられたが、挨拶もそこそこに寝入ってしまった。

 昼過ぎに起きた時には、不機嫌な二人をなだめるのに苦心させられた。おしゃれなレストランで、少し豪華なランチを振る舞い、彼女達から得られた情報を伝える。といって、新たな情報としては、彼女達が相手にするのは地位や財力のある人々だという事くらいだ。

「フェネとも話していたのだが、ワシ達はもう少し自らを鍛えねばならぬのではないかと」

「鍛える?」

「うむ、ワシは神術士として、まだまだ未熟。相手がもし権力者の側にいるような輩だとすると、力不足であろう」

「私もしばらく戦ってないし、バイスさんが近くにいる間に少しでも教えてもらおうかと」

「なるほど……」

「ソナタも魔剣のおかげでかなり強いが、相手も同等の魔剣持ちとなると、技量がものを言う。まだスキルも覚えておらぬだろう?」

「スキル?」

「まあ、これじゃからな。一度街の道場にでも行ってみるがよい」

「う、うむ、わかった」

嫉妬エンヴィを追いかけるのはそれからじゃな」

『我も彼女の意見を支持しよう。あるじに掛かっている呪いを上書きされる危険もあるからな』

 俺が嫉妬エンヴィの呪いを解除しているように、魔剣に食わしている恐怖心が戻る可能性もあるわけか。

『一度や二度の攻撃で、解けるものではないが、ダメージを受ける回数が増えれば可能性は高まる』

「わかった、俺もずっと我流でやってきただけだからな。ちゃんと指導を受けてみるよ」



 今後の新たな方針が決まり、翌日からはしばらくそれぞれの鍛錬に費やされる事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ