8
「どっち行くんだよッ」
……また叱られた。首をすくめるワープだ。
「港橋なんか渡ったら、“海判定”くらっちまうだろ?」
敵わぬまでも、懸命に弁明するワープ。
「いやでも、ぼくはこっちだと思うんだ……」
「バカすぎる! そこにホテルの案内看板あるじゃん!? こっちだよ! 国道橋の方から行けばいいんだよ!」
「ナビがないと……目標が目に見えてないとだめなんだ……」口ごもり、すがるようにパムホに目を落とす。だが勿論、“プレイ中”だから“現在位置の表示はない”。ただの勘だった。「こっちだよ間違いない……」あさっての方向の、港町の小路に足を進めかける。
「うわあっ!?」ドールは演技でもなんでもない、「コイツ正真正銘の方向オンチか?! それも神・悪魔レベルの?」
マジで頭を抱えたのだった――
埠頭から歩きだしてまさに数分のことである。その間、次から次へとやらかす迷いっぷり。
一言、ヒドイ。
手の付けようがない。
見る者が思わず後ずさるほどの、厄災級の土地勘のなさ――
ワープ、申し訳なさそうに、
「無理してぼくに付き合ってくれなくてもいいんだよ……」
「それが狙いか!? 信じらんないッ??? このボクを拒絶するなんて――!!」
今度はワープが頭を抱えたのだった。
「しっかりしてよ……」「お前のコトだァァァッ!!!」
ドールは続ける。「――よく、よくそれで、これまで“ゲーム”してこれたな?! 日常生活おくれたよな?!」
「ほんとにねぇ、あはは……」
ドールは片手で顔を覆う。そして片目をギラッ、とさせる。
「……今回かぎりだぞ。マジで今回かぎりだ。ゲーム終了まで組ませてくれと申し込んだのは、なんとボクの方だ。だから最後まで付き合う。が、エンドを迎えたら、それっきりバイバイだ。バイバイ! エンガチョ! オンチがうつる!」
「そんなきみに、“長押し”の一手……」
怒りか、あるいは羞恥か知らない。ドールは耳を紅潮させた。その手があることは当然知っている。知ってて放置とは、これいかなることなのか――?
心の、一瞬のせめぎ合いののちに、彼は意思を固めたのだった。
「――ついて来い! ホテルはこっちだ」
ワープは笑顔になる。
「ホテルの建物が見えるとこまででいいよ。そこからだったら案内できる……」
「当たり前だドアホゥッ!!!」
強引に手をつなぐ。引っ張る。乱暴に、足早に――
「フン……!」頬を赤らめる。
「えへへ……」頬を赤らめる。
実際はどうだか知れない。だが傍目から見れば――
けっこう仲よさげに。二人は、港町を歩いて行くのだった。




