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ドールがワープのラインをコピーし、プレイヤーとして申請をすべて終えたときだ。
ちょっとしたイベントが発生した。
驚くことに、あのDQNトリオが、フェリーターミナルに姿を現したのだ!?
それも、まるでどこからか命がけで脱走してきたかのように、息絶え絶えで、泥跳ねだらけの着衣をボロボロに乱し、全身ずぶ濡れ、汗みずくという強烈な姿になり果てて。
一方、ちょうどのタイミングで、JFL・レインボー号が、本日の最終便として離岸し始めており――
船を見て悲鳴を上げ、追いかけるようによろよろと埠頭を歩き、ガックリと膝をつく――
去りゆくその船影に腕を、手を、差し伸べて、切なくうめき声をあげ始める。
そして号泣である。(正直キタナイ)涙を、鼻水とともに止めどもなく流し始めたのだった。
「……」
島民ともども、みな無言。
三人のその姿は、いにしえの昔にあったという、遠流の刑。
ご赦免むなしく島に置き去りにされた罪人の姿を、偶然にも彷彿とさせていたのである。
隠岐島――
古くから島流しの島として知られる。
後鳥羽上皇、後醍醐天皇、その他多くの人々が流された……。(ウィキより)
さぁ――先ほどの、今、だ。
パトカーに追いかけられたことを目撃している大多数の人たちが、その結果の三人のこの姿だと納得している中で――
約2名だけが、微妙に異なった反応を見せていた。
“設定によれば、少なくとも一時間はこの世界にいるはず”。
その肝心の“パトカー”はどうしたのだ?
三人とは逆、街の方向へ顔を向け、追いかけてくるはずの、その未だ姿をみせないPCに、小首をかしげるのがワープ。
そしてその傍らで――
素知らぬ顔で、こっそりとくちびるを微笑ます、ドール少年。
二者二様の姿だったのである……。
ともかく。触らぬ神に祟りなしだ。
ドール、パムホを手にし、軽くうながした。振り返るワープの見ている前で、ボタンにタッチする。
「行こうぜ! ボクら二人の出会い。その記念すべき“スタート”が、今だ!」




