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「ここはどこだ!?」
見事にうろたえてくれる一兄さんだった。
「そうそう、これだよこれ」
ようやく満足の表情を見せるドール。
しかしながらわかってるワープでさえ、
「ほんとに何時なんだよ……」と苦笑する。それほどの激変だった。
そこは――
今までの快晴の空とは打って変わって――
辺りはどんよりと薄暗く、今にも雨が落ちてきそうな、そんな天地であった。
ドール、ワープに答える。
「昨日の正午だ。急げよ。あと2時間もしたら、“牛突き”が始まっちまうからな」
「なにを急ぐんだよ……?」
そう笑いながら受けて、ワープ、改めて――
無造作に金頭に歩み寄るのだった。
彼としては、すぐにでも終わらせる気でいたに違いない。ところが――
やはりというか、この金頭、ダテではなかったのである!
打ち放った拳、蹴りは全て受け流され、逆打ちされる。ならばと組み技を仕掛ければ、これもまた、圧倒的な膂力で弾かれてしまう。返って、ダメージを負わされてしまうのだ。
「チビスケがっ!」
得意になって金頭が吠えた――
「お節介していいか?」
ドールが遠慮がちに声を入れる。
ワープ、無念に答えた。
「チッ……期待を裏切ってしまった。遠慮は無用。好きにしてくれ」
それを受けてドール、その魔法の言葉を口にしたのだった。
「TC! ワープ、キミを今から、10歳、成長させる。子供の体のままじゃ、どうやら勝てそうもないからね。金頭クンとの体格差を逆転させるから、それからよろしくやってほしい!」
そのセリフも終わらぬうちに、もりもり、メリメリと体を膨らますワープだったのである。
それは――
まるで、アメリカンヒーローの“筋肉男”のようでもあり、上へ横へ、見事に膨張した鋼の肉体は、当然のように子供の着衣をボロボロに千切り、破り、ここに素裸のワープ青年の姿を現出せしめたのであった。嗚呼、ワープ。何一つ隠すことなく堂々と、仁王立ちになり――
じろり、とドールに目をやり。
「おぼえてろ……?」
そしてフッ、と優しく笑うのであった。




