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「――では、めでたく再々度、ゾーンインしたところで、おまちかね、TTします!」
血色ゆたかにドールが声を張り上げる。
「リューシィはご存じでしょう、ここが第二展望台で、どん詰まりです。ゴールラインたる海岸線から25m以上離れてますので、自動ゴールはできません。“長押し”によるゲームクリアとなります。でも、こんな地形ですので、“システム”も、海から海への旅だったと認めてくれると思います。スペシャル点が期待できますよ……」
リューシィは示されたマップ画像を見て大笑いした。
(https://www.google.co.jp/maps/d/edit?authuser=0&hl=ja&mid=z55lkfXJKwZo.kEqGfd-zEY0A)
「これでいいの? ぜんぜん真っ直ぐじゃない!」
ワープ、悪びれず堂々と主張するのだ。
「これ以上の真っ直ぐはありませんよ……。今からTTして15:01の時点に行きます。その後、現世に帰ります。つまり、スタートして1分後に、ゴール直前の位置に“ワープ”するということです。その間の実走ログは当然ありません。空白です。すると“システム”は、その間を直線で結んでデータ保存するんです。これは経験済みですから保障します。
スタートからゴールまで一直線。さぁ……これ以上の真っ直ぐは、ないとは思いませんか……?」自然と起こる笑い顔だ。リューシィもまた笑顔で、
「ズッコイわねぇ」と受けるのだった。
ワープ、控えめに肩をすくめた。はにかみながら、それでも声に力をこめて主張する。
「人は、道があるから真っ直ぐ走れるんじゃないんです……」
ドールが後を引き取った。
「あらゆる手段を尽くしたから、真っ直ぐに走れたのさ!」
もう笑顔以外の何物でもないリューシィ、
「ぬけぬけと! 都合いんだから!」
「ぼくらは真実、一生懸命やったのに……」
「ああ、ボクらの真心は、天のみぞ知る、か」
「ナマイキ――アハハハハッ!」
堪えきれず声をあげて笑いだし、両腕に二人を抱くリューシィ。――これで、論議は終わったのだった。




