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「“状況”を開始する……」
と、ワープ。鼻血をようように止めて、ようやくに必要なセリフを口にする。
でも、その目はいまだ光強く、ぜったいドールを手放さないぞと、雄弁に物語っていたりする!
ドールもまた――
生涯、他者にこれほどまで自分の秘密を明かしたことはなかったのだ。
ガッ――と、突発病的なまでに興奮してて――
これが失敗だった。
抜け目のないドールもまた人の子。初めてのワープとの共同作業で勝手が違ったせいもあったろう、珍しいポカをやらかしてしまった。
これは――“青瞳”の“本人”に戻ってから、やるべきことだったのである。
気づかず、ワープは言葉を続ける。
「現在、13:10。あの近石の橋のところでWTしたのが11:30のことだ……」
つまり、なんと一時間以上、ドールの撮影会をしてたことになる。
その映像は、ワープ一生涯のお宝となるのだが、改めて――
「~~……!」
一時間という事実に、ワープも、ドールも改めて――顔を赤らめさせたのだった。
ワープ、えへんっ、と、
「現世から消えて1時間40分。現世では査察入れられて、とっくにゲームオーバーになってるだろう……。それを、いまからドールくんの能力で、歴史を書き換える――」
“ドール”。この言葉を口にするだけで真っ赤になるワープだ。
そして、相方のそれに順反応するドールだったりする。
「じゃあ、ドールくん。うん、お願いする。うんうん……」なんともぎこちない。
「うん――」
さぁ――!
これからTT&WTする先は、11:31の、現世のこの場所である。
消えてから1分後の世界。二人のコラボで可能になった、上書きすべき現世――!
なんてことない、ドールにとっては日常の、ささいな能力行使にすぎなかった。
ピュンッ。
そして、ワープ――
きゅんっ。
――こうして、二人は自ら罠に嵌まってしまったのである。