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寒いトンネルから暑い夏空の下に出て――
歓声を上げる二人だった!
そして、背中の相方の、声質のその微妙な甲高さに気づかされるワープ――
その瞬間、相方の体が緊張し、よって感づかれたことを悟るドール――
トンネル出口、道路脇のスペースに停車してサイドスタンドをかける。
「……」
いまは誰も無口で、ワープは前を見据えたまま降車して、少し歩いて、振り返る――
「!!!」
ワープ、スクーター上に、奇跡を見る――
イケメンではない。
さりとて、超イケメンでもない、ブサメンでも勿論ない――
超越した――
愛の化身とでも言うべき、人の形した何かを――天使を、見たのだった――!
「ぐふぅ……!」
まるでお人形さんのように綺麗な子だった。
おでこでM字にしたサラサラな銀髪は肩にまで届き、ほつれた細い毛が長い睫にかかっている。瞬くその瞳は、まるで宇宙のような“赤紫色”だった。柔らかな鼻梁、細い顎。へそを見せた白麻の半ソデ開襟シャツ。ローライズなデニムのショートパンツ。見せつけるかのようにすらりと伸びた足の先に黄色のサンダルつっかけて。腕は細く、手も細く、肌の色は、体質変化は滅多にしないのだろう、大切に守られた、信じられない柔らかさを伴った、ベィビーホワイト――!
全体の印象が、ドール少年のシャープさから、何か、柔らかきものに変じていて――
デニムパンツがぴちぴちで、ラインがくっきりで――
無意識のままに美にひれ伏すワープだった。手が勝手に動いていて――
さながら蝶に大変態したドールを、喰うように激写していた!
モチロン、サービス満点なドールである。秘密を明かしたことで気が上ずってもおり、フフン、と血色ゆたかに、望むままに、いろんな、いろんなポーズをしてくれる! 全身が震えた。鼻血が出そうだった!
感極まってワープが叫ぶ。
「きみは今、無限人のぼくの絶賛を一身に浴びてるよ!」
「キモいこと言うなよ!」
そう可愛い声で応えてその“存在”は、小悪魔的にコケティッシュに笑ったのだった――




