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そうとなれば、いよいよ――!
「説明のため、時間と地点を簡単にするよ……」
ワープが山越え作戦を、本気で語り出した。
「スタート地点をS、ゴール地点をG、障害である山のこちら側をA地点、向こう側をB地点とするんだ……。
仮に正午スタートだとして、普通だったらこうなる。
12:00 S S地点を元気よくスタート。
13:00 A A地点に到達だ。普通ならここで、ゾーンアウト。ゲームオーバーとなる。
14:00 B B地点に到達。山を大きく回り込んで、再びゾーンインしたんだが、しかし……。
15:00 G G地点にゴール。判定は当然ペケ。やるだけ無駄だった……。
そこで、僕のMT能力を使ったとしたら、どうなるか? こうなる。
12:00 S スタート。
13:00 A 到達。ここで、MT。
障害が解消された(たとえばトンネルがある)別世界と、環境を交換する。
13:30 B 到達。トンネルのおかげで早く着いた。ここでまたMTして、世界を元に戻す。
14:30 G ゴール。判定は……マルだ。
ただし、これは理屈上だ。今回のような何キロにも及ぶ、そんな大規模なトレードはしたことない。影響が大きすぎて、現実に何が起こってしまうか、想像するだに恐くてとても実行できない……。
そこで、逆に、ぼくらの方が別世界に出向くことにするんだ。
僕のWT能力を使ったとしたら、こうなる……。
(破線はゼロ時間移動)
12:00 S スタート。
13:00 A 到達。ここで、WT。
障害が解消された(たとえばトンネルがある)別世界に移動する。
13:00(A)別世界のA地点にジャンプ。ジャンプ時間(移動時間)はゼロ秒だ。
この時点で、現世から見ると、ぼくのパムホ反応は消滅することになる。
13:30(B)別世界のB地点に到達。ここでWT。
13:30 B 現世に帰還。再びゴールを目指す。しかしながら……。
14:30 G ゴール。判定は……ペケだ。
なぜなら、13:00の消滅の時点で、“システム”から注視されてしまうから。
きみの言うとおり、“システム”は時空を超越してプレイヤーを観察できているのかもしれない。
距離的な場所の移動が生じたとたん、査察を飛ばしてくる。
自分は別世界にいて通信が途切れている訳だから、本人認証に対応できず、結果、ゲームオーバーとなる……。
事実、ぼくがなかなかランクアップできないのは、これのせいなんだ……。
そうなると、ぼくの能力よりか、きみの能力の方が、クリアできる可能性が高いんじゃないかと思えてくるんだが、どうだろう……?」
「いいよ、実にいい。続けて!」
ドールが興奮気味にうながした。




