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「さぁ、こっから、道があやしくなる……」

 ようやく、ドールは続きを口にした。


挿絵(By みてみん)


 パムホを手にしながら、

「このエリアでは、青線のように国道485号に出ちまうと、アウトだ。かといって、他にルートはない」

 ワープが一本の小道を指摘する。

「この、田んぼの中を伸びてる細道はどうだろう?」

「見ての通り、あと少しのところで途切れている。ワープクンは、それを知ってて、なぜそんなこと言うのかな……?」笑いをふくんだ声。

 対して、「……」もどかしそうに口を閉ざすワープだ。

 一度くちびるで笑んで、ドールが言葉を続けた。

「まあ、正解はその通り! この細道なんだけどね」

 ふたたびパムホを操作する。

「“システム”はグッド社と提携してるからこの、グッドマップなんだけど、別の地図、たとえば国土地理院のマップで見てみると、ここ、つながってるんだよね……」

 パムホ同士リンクしてるので、ワープにもすぐに画像で確認できた。


挿絵(By みてみん)


「というわけで、細道で問題なし。さぁ、出発だ」

 何事もなかったようにワープの肩を叩き、発進をうながした。

「……」


挿絵(By みてみん)


「……」

「……」

 暑いけど長閑な、夏の田んぼの中の小道。トコトコと走る、二人乗りの赤いスクーターだ。


挿絵(By みてみん)


 沈黙に耐えきれなくなったのは、やはりというかワープの方だった。

「ドールくん、きみは、“時間”を操ることができるんだね?」

 いきなりの直球ド真ん中な物言いに、弾けるように笑い出すドール。

「うまい誘い水だよワープクン。ならば、ボクはこう言葉を返そう――そういうキミは、なにやら“不思議な空間”を操ることができるんだね? と!」

「むむ……!」

 汗の流れる暑いさなか、ドールは体を密着させ、耳元、更に熱い囁きを吹き込む。

「まず、キミから考察をのべたまへ、ウフフ!」

 学生かよ、と呟きつつ、ワープは誘いに乗ったのだった。

 一度息を吸って。

「きみは時間を操ることができる! 具体的には、任意の他者を随伴して、時間旅行ができる。でしょう……?」

「見た、そのまんまだ。キミの解答(レポート)とはその程度のものなのかネ(笑)」

「ぼくもきみに、同じ事いえるんだぞ……たぶん」

「ウフフ、まぁいいか。こんなこと話しするのは、実際キミが、生涯はじめての人だよ。キミだから話すんだからな――」

 そして自分語りを始めたのだった。


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