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「どっち行くんだよッ」
……またか。首をすくめるワープだ。
「なんで橋わたらないんだよ!? 一番確実なルートじゃないか!!」
適わぬまでもワープ、懸命に弁明する。
「いやでも、ぼくはこっちがいいと――」
「バカすぎる! Uターンしろよ――って、あああ――EPB速すぎ! もうここまで来ちまった! どーすんだよ? さっきからロスばっかじゃん!?」
「目標が目に見えてないとだめなんだ……」口ごもり、すがるように左を見る。そこには八尾川の頼もしい流れが見えていたのだった。「左岸、川沿いに進めば間違いないよ……」弱々しくも断言する。
そして――これをまぐれ当たりと呼ぶのか、これには唸るしかないドールだったのである。「――クソッ!」
たしかに、八尾川の左岸に沿って進めば、当面の目標の分岐ポイントまで、迷うことなくたどり着ける。これはワープの言い分のとおりで……不承不承、認めるしかないドールだった――て!?
「おい、左岸の意味、分かってるよな?」
「川の中に立って、川下方向を向いたとき、左側が左岸だよ……」
「ぐうう……!」
しゃくに障るもまたしても正解である。ゆえに反面、安堵しかけたドールで――てッ!?!
「ストップ!!! 止まれバカヤロウッ!」
「わっ?! 危ない、危ないよったら――ッ」
「止まれーーーー!!!」
「うぎゃあっ!?!」
スクーターが激しく蛇行し、キキィッ! とハデなブレーキ音たてて急停止する。慣性でつんのめり、斜めになり、それでも何とか踏ん張り転倒はまぬがれたワープだった。非常事態に顔まっ赤。だが第一声が、
「きみ、いくらなんでも、ヒトのチンコ握りつぶすこたァないでしょうがぁ!」これだ。
「うるさいうるさいうるさい! 緊急事態でなおかつちっともゆーこと聞かないキミが全部わるいんだからね!」
「止まれと一言いやいいんだよう!?」
「言った言った言った聞かなかったのはそっちだろがあぁぁぁ!」
ドール半狂乱のていである。ワープ、頭を抱える。「うが――?!」
冷静になれば確かにそうで、顔まっかに唸るだけだ。
隠岐島は島である。ここに限らず、島全域において交通量が極端に少ないのが幸いだった――と、微妙にズレたところで自分をとりあえず慰める。それと――
ぜったいこいつのチンコつぶし返してやる!
その決意を胸にすることで、ようやく呼吸を鎮めることができたのだった。
「で……?」
対して、まだ興奮が収まらないのだろう、多少どもりながらもドールが指摘した。
左を指さし、「こ、この川は、や、八尾川じゃない!」――
「――“有木川”だ!」
「え?」
慌ててパムホを確認する。
下から上方向、黒線が二人の実走ログ。(実際は表示されない)
「見ろよ、細いけどたしかにあるだろ? 合流地点が道路から見えにくかったうえに、支流の有木川、合流直前でガッと川幅が広くなってる。それで自然と、走らされた。ものの見事に川に騙されたんだよ!」
「てことは、ここは県道323号……?」
「そう。このまま走っても結局牛突きドームに着けるけど、ゾーンアウトは必至だ」
「危なかった……」納得し、さすがに恥じ入るワープだ。
そしてようやく心が静まったのだろう、いつもの調子で胸を張るドールだった。
「わかったか? 未熟者め!」




