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就学前のころ――って、今もガキンチョだけどさ――軍空港跡地で“申請”したことがあるんだ。
当時の友達は、ペナルティをくらうからやめたら、と心配してくれたんだけど、その時の自分は、だからこそ逆に“旅”だと認めてくれるはず、と考えた。
それに、そんな条件でしか、満足に歩けなかったしね。(笑)
だだっぴろい滑走路。
携帯端末・パムホを操作して、現在地をスタート地点と定めて、遠いけど目に見えてる1km先をゴール地点とした。
つまり“マージン”は50m。青空のもと、障害物も何もなく目の前に広大に広がる光景を見て、広い、と実感した。だから、楽勝、とも。なんらアクシデントが発生する要因はないし、1kmという距離も、あせらず着実にやれば、子供の足でも問題ない。記念の初得点1ptを、確実にゲットできると――自分に言い聞かせて――気分が高揚するままに歩き始めたんだ。
あと10mでゴール、というときだった。
何も遮るものがない大地、急に横から強い風が吹いてさ。
うかつだった。
ストラップも何もなく、ただ胸のポケットに入れてただけの、10エン硬貨なみの質量しかない、大事なパムホが風にさらわれた!“ライン”から25m先へ、カラカラと転がっていく――
真っ青になって、次の瞬間追いかけて、捕まえたがもう遅い。画面をみたら。
認めたくない『アウト』の文字。追い打ちをかけるように『感心しないエリアでの実施』という理由で、得点欄に『-10pt』の表示がなされていた。
自ら招いた現実に、泣きそうになったよ。ともかく――
それが、ぼくの初めての旅だったのさ……。




