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8:45、チェックアウト。正面玄関を出ると、そこにはすでに、昨夜契約したレンタル会社の、お迎えの電気自動車が待ち構えていた。おはようの挨拶とともに、さっそく乗り込む二人だ。
レンタル会社はここから川上に向かって、約1kmほど離れた場所にある。(当然ゾーン内!)
運転席には社員の黒髪のオバサンがいて、手慣れた様子で国道沿いに車を走らせようとする。慌ててダメ出しする二人だった。
「国道はマズイです。川沿いを走ってください……!」
それでピンときたのだろう、余計なことは何も言わず、ただ微笑んで指示どおりに車を操り始めた彼女だった。
赤線:ライン 緑枠:ゾーン 青線:グッドマップの検索ルート
(プレイ中だから二人の現在位置は表示されていない)
それにしても――車窓から見える、その川! 幅があり堂々としたものだった。
ここまで大河だと――違和感ありまくりのワープである。だって、島だよ? 水源はどうなっているんだろうと思わないだろうか? こんな大量の水を流したら、あっという間に枯れるんじゃないか、と心配してしまうのだ。
横のドールも川の雄大さに気を引かれたらしい。堤防の立て看板にあった河川名『八尾川』を、「“やおがわ”……」と無意識に口に出して読んでしまい、オバサンに、
「お嬢ちゃんは“関西人”なのねェ」と笑われる。「“やびがわ”と言うのよ、オホホホホ……」
「いやこの子こう見えて男なんです……」
とフォローを入れたんだが、なぜか唇をとがらかせ、グーを脇腹に突いてくるドールだった。ナンデヤネン?
数分後、川沿いの、レンタル会社に到着する。
いったん社屋に入り、契約の書類作成。そのあと屋外に出て、レンタルバイクと対面する。
真っ赤な、125クラスのスクーター型電気バイクである。
一台。
昨夜、台数を話し合ったのだが、“二人乗りできる一台”が結局、コスパ的にベスト、と押し切られたのだった。
自由気ままな一人一台の方がいいのでは、と思っていたワープではあったが、実際、今――
こうして跨がり、そして。
その後ろにピタッと、ドールに密着されて――
腰にその細い腕を回されてみると――
「暑いよ……」
という抗議はいかにもわざとらしく。やっぱりコレでよかったかなぁと、ほややんっと、思い直していたのだった!
ぺちっ、と黒髪をはたかれる。夢が醒める。
「おい、ゴーだ、ゴー! ノロマだな」
「うんうん……」顔を赤らめて――
オバサンに記念の画像を撮ってもらって――
さぁ――
アクセルワーク!
なぜか、満面の笑みの大勢の社員たちに手を振られ、見送られて。
ようやく本格的に、ゲームの盤上に身を投じるワープらなのであった。




