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「で、僕たちが今、してるのが、“旅”ゲームというわけね?」
だいぶ寛いできたリューシィだ。ともすると体を守る腕が緩んで、そのたびにワープはドキドキするのだが。
「それ、ほんと流行ってるわよね。たしか創られたのがもう何十年も昔なのに、いまだ盛んにプレイされている。名作なのね?」
「――はいっ、はい!」話を振られたことにようやく気づくワープだ。クスリ、とリューシィ、
「今、“1pt”の相場って、2000エンくらいだったかしら?」と続ける。
「はい、そのくらいです」しょうがない、という顔をワープに向けながら、ドールが答えた。
「今回の僕たちの“ライン”は……?」
「約15.7kmです。最高高度は、峠のところで100mちょっとですね」
「となると、15+1の16pt、32000エン。具合よく、そっくり旅費にあてがえる。ほんとよくできたゲームだわ。僕たち、しっかりプレイすることね……」
ここは、受け損なうことがなかったワープだったのである。
「“リューシィのゲーム”は、キツいの?」水を向ける。
うふふ、と意の適った笑顔の彼女。
「個人的な願いはわたしにもある。もっとバストサイズがほしいし(笑)、耳の形も、もう少しでいいから、丸くあってほしかった!
でもね、そんなことは些細なこと。もっと大きな願いがある――」
ふう、と体を抱きしめて。
「この島の人たちはね、何百年何千年もの昔の人たちから、伝統的、文化的にもはや消すことの許されない呪いをかけられている。
曰く、隠岐島は島流しの島。忌避すべき土地なのだと――」
一度くらいは聞いたことあるでしょ? と尋ねられて、そろって頷く二人だ。
「でも……」とワープ。
「それは……」とドール。
「うん」とリューシィ。
「そうよ、現代に全然そぐわない、つまらないラベリングだわ。事実、島民のだれもこんなこと気になんかしていない。逆に観光資源にさえしてる。つまり、全くわたしの個人的なこだわり、感情論でしかないことは承知している」
安心させるようにニコリとする。だが続ける。
「でも、こだわってしまったんだから仕方ないよね。
だから、わたしはわたし自身のために、この呪いを、打ち破る!」
続ける。
「大学は、京都のを目標にしている。京都からの合格通知が、私へのご赦免状。それをもって、船にて、島を出る! この形しか、わたしは認めない。この形でのクリアでしか、残りの、長い、人生への希望が持てないのよ。
……面倒くさい女と思うでしょ? うふふ。
でもこれが、わたしのゲーム。しっかりと、全力をたたきつけるつもりよ」
凜として美しく微笑むのだ。
ここに、一生懸命な人がいる――
感動だった。勇気がわいた。
「ぜひ、連絡先をおしえてください!」
リューシィは、珍しくきりりとしたワープに顔を向けると、あっけなく合い言葉を口にする。
「わたしの名前と今の言葉で、つながるようにしておくから。ただし――」
ここで彼女はイジワルに微笑んだ。
「――僕たちの“ゴール”成功が、必須の条件だからね!」
ひるんだのは仕方ない。しかしながら、一瞬だけだった。ほやんと……、
「……その際は、ぜひご褒美を」
はじけるように笑い出すリューシィ、
「ばあか! 僕? おませ! ウフフ、せいぜい期待、しときなさい!」
そして追い立てたのだ。
「さあさ! もうお上がりなさい。このままじゃわたし、茹だっちゃうわ!」
ドールが頷いた……。
ピュンッ。