13
同じ湯につかりながら、まず、肩から上、どう見ても美少女なドールが話しだした。
「ボクは男です。この格好は、相方に仕掛けたドッキリ作戦だったのです。そしてすみません、“今”、ここに誰か人がいるとは思ってませんでした」開き直りの潔さだった。うふふ、とお姉さん、綺麗な声で、
「このホテル、親戚が経営してるの。だから、帰宅途中に自由に使わせてもらってるのよ。広いし、ストレス解消に最適だから」
と、自分がいたことを解説してくれる。
ドールが会話を受けた。
「あらためて。ぼくはドール。そしてコイツは“絶対方向音痴之助”という二つ名の、ワープといいます。事実、ご覧の通り、目を離したらどこに行ったかわかりません。共々よろしくです」
「うが~~!」
うふふ、とお姉さん――水色の髪の毛をおかっぱにし、瞳の色は青色。肌は夏の日差しを完全拒否した白色で、今は湯につかり健康的に上気している。
美人の笑顔だった。
いきなり意識して、ワープの顔が赤くなる。うふふと――
「島リューシィです。高校2年生です。よろしくね、僕たち……」
ドール共々、二人して驚いたのだった。
100年前ならいざしらず、今の時代、義務教育は小学校までである。
学業を趣味にしている者が中学校に進み、たいてい、そこで終わる。
真剣に学問を究めたいと志望するものが大学に進むのだが、そのレベルにまで引き上げる役目を果たす教育機関が、高校だった。
だから、このリューシィお姉さんは、実はとんでもない優秀な人だったのである。
残りの長い人生を、“いろんなゲーム”で潰しながら生きる自分ら一般大衆とは、立ち位置が違う人だった。そりゃ、親戚さんも期待するだろうし、できる限りの援助もするだろう。
「邪魔してすみませんでした……」
ワープは改めて謝った。
「逆にストレス解消になったからいいけど、許すのは今回だけよ?」「はい……」