〜脳内デートはちょっと強引な俺様系彼氏〜
脳内彼氏様と妄想デートをしています。変態度は25%(笑)
待ち合わせた時間よりは10分ほど早くに到着した私だったけど、彼はすでに待ち合わせ場所にいた。しかも、逆ナンされてる。
「良いじゃん。ウチらと一緒に遊びに行こうよ〜!」
「チッ…行かねぇよ!待ち合わせてるっつってんだろ!失せろ!」
「友達?なんなら友達も一緒に行こうよ〜。」
随分と強引な勧誘である。それに心臓強過ぎる。彼氏様にあんな風に睨まれて怖くないのだろうか?私だったら裸足で逃げ出すレベルである。しかも待ち合わせは男友達と決めつけている様子。彼氏様の額に青筋が浮かんできた。
これは止めに行かねば、後で私がお仕置きされてしまう。……夜のお仕置きなら嬉しかったりするんだけど。ウヘヘヘ。あ、そろそろヤバイ。
「ごめん!待った?」
「遅ぇよ……チッ」
「そんなに待った?待ち合わせの時間には間に合うように来たつもりだったんだけど。えと、そちらの方は?」
遅刻はしていない事をさりげなく伝えてから、彼氏様の腕に寄り添うちょっと化粧が派手な女の子に視線を向ける。
「まさかこの子と待ち合わせしてたの?」
明らかに見下されている。無理もないか。地味なのは自覚している。彼氏様がどうして私と付き合っているのか。疑問に思っているのは目の前の女の子だけではない。彼氏様の隣を歩くのに相応しい女の子は他にも居るだろうに。 俯く私の顎を持ち上げて目線を強引に合わせる彼氏様。超絶かっこいいけど、首イタイです。
「チッ…お前また、くだらねぇこと考えてんだろ?」
くだらないかどうかは、わからないけど、ネガティヴな思考はしてました。
「ご、ごめんなさい。」
「チッ…」
彼氏様は最後に盛大な舌打ちをしてから、腕に寄り添っていた女の子をやや乱暴に振りほどき私の手を取り歩き出しました。びっくりした私は彼氏様の背中を見つめながら、自分の背中に感じる怨念めいた視線に気付かないフリをして、タダひたすら足を動かす事に専念しました。
星のマークのコーヒーショップに入り、彼氏様はカフェモカ、私はキャラメルマキアートを注文し、店内の奥の席に一先ず落ち着く。
「………」
「………」
無言がイタイです。どうしよう。何か会話をした方が良いのでしょうか?それとも彼氏様のお言葉を待った方が良い?ジッとキャラメルマキアートを見つめていると、フっと張り詰めていた空気が緩んだ。
「チッ、怒ってねぇからそんな顔すんな」
舌打ちなんだかため息なんだかよくわからない「チッ」が聞こえたけど、口調よりも声質は柔らかいので、多分、本当に怒ってはないと思う。恐る恐る顔を上げれば、思っていたよりも優しげな視線に安心する。
「今日はお前の行きたいところに付き合うって約束しただろ?んな不安そうな顔すんな。」
「…うん。」
自分と他人には滅法厳しい人だけど、私にだけは優しい優しい彼氏様。(大事なことなので二回言いました!)でも臆病な私はどうしても疑心暗鬼になってしまう。“なんで?”“どうして?”が頭から離れない。ズズーとカフェモカを飲み干す彼氏様だけど、私はまだ半分も飲んでない。急いで飲もうとすると彼氏様がパッと私のキャラメルマキアートを奪ってしまう。
「慌てんなって。お前のペースで良い。無理に俺にあわせてたら、お前すぐ疲れんだろ?」
そう言って私のキャラメルマキアートをちゃっかり一口飲んでいる彼氏様はどこまでも私に優しい。
「で?どこ行くんだ?」
乙女の聖地に来たんだ。あそことあそこには絶対に行きたい。それから余裕があればあそこにも!行きたい場所を頭で精査していると彼氏様が突然笑い出した。
「フッククク。そんなに真剣に悩むほど行きたい場所がたくさんあんのかよ。」
カァと顔が赤くなるのが鏡を見なくてもわかった。恥ずかしさのあまり俯いてしまう。
「今日はお前に付き合うって決めたんだ。遠慮なんてすんなよ?行きたい場所全部行くぞ!」
「うん!」
コーヒーショップから目的地まではすぐだった。あれこれと欲しい商品を品定めしていると彼氏様がまたもや逆ナンされていた。でも今の私は目の前の商品に夢中なので構ってはいられない。予算という大きな壁を前に、右手の商品か左手の商品にするか決断しなければならないのだ。グヌヌ…唇噛みすぎて鉄の味がする。
「チッ…連れがいるんで」
「ぅわ!?」
いきなり抱き寄せられて可愛くない悲鳴が出た。けど今は悲鳴なんてどうでも良い。狭い店内、休日の昼間という事もあってそれなりに人がいる中、彼氏様に抱きしめられてる。…………デンジャーデンジャーSOSSOSメーデーメーデーヤバいヤバいヤバいヤバい。誰か助けて!!彼氏様がいきなり暴走したんだけど!
「その子が連れ?貴方、もっと自分に自信持ったら?」
この女性、彼氏様を持ち上げて、さりげなく私とは不釣り合いだと、言っているんですね。大人の女性の言い回しに感心してしまう。けど、彼氏様はカチンときたようだ。
「こいつの価値は俺が知ってる。俺だけが。他のやつに教えてやるなんて勿体ねぇことしねぇし、あんたとは雲泥の差なんだよ。」
肩抱かれてそんなこと言われたらトキメイちゃうじゃんか!!両手にある商品なんかどうでもよくなっちゃったよ!!つか、手!!肩抱かれてたはずなのに、なんで首撫でてんの?顎を持ち上げんな!?そんでく、唇なぞるなぁぁ!!
真っ赤になった私より、さらに顔を赤くした大人の女性はプライドを傷付けられたせいか、私たちに罵声を浴びせてから店を出て行った。
いろいろ気不味い私たちは何も買わずにさっさと店を出ることにした。
二軒目のお店ではショップ限定品を予約して終わった。
通り沿いにある大きな公園でちょっと休憩。ベンチに座って一息つく。フと彼氏様の手が視界に入った。先ほど、この指先が私のく、く、く、唇に触れた。思い出して顔を赤くしてしまった。
「どうした?」
「ううん、何でもない。」
慌てて否定したものの、彼氏様にはお見通しだったらしく、ニヤリと意地悪そうに笑った。
「何でもない?じゃ、何でそんなに顔赤いんだ?」
スルッと頬を撫でられてますます赤くなってしまう。
「ちがっ、…だって」
否定したいのか、そうじゃないのか。意味のない言葉ばかりが口から出てくる。
「俺はてっきり、俺の指に欲情してくれたのかと思ったんだけど?」
耳元で囁かれたぁぁぁ!!エロボイスご馳走様です!いやいやいやそうじゃなくて!手っ手っ手!手の動きが怪しくなってますよぉ!私の手、足、腰を撫でてますよぉぉぉ!!私三十路だけど介護はまだ間に合ってますよぉぉぉ!
脳内彼氏様は些か強引ではありますが、私は脳内デートを満喫するのでした。