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Episode:09

「この地方……けっこう、暑いんですね」

「まぁな」


 真夏のこの辺は、けっこう日差しがキツい。しかもまだ昼下がりだからなおさらだ。

 けどこいつ、それを気にする様子はなかった。むしろあんまりにも白い肌に、見てるこっちが心配になる。


「どっか入るか?」

「大丈夫、です。

――いいな。こういう街中」


 つま先で石畳叩いて、にこにこしてるし。

 けど、このままぶらぶらしてるだけってのも、芸がないだろう。


「鐘楼、登ってみるか?」

 とりあえず、そう持ちかけてみる。

「あの塔、登れるの!」

 ぱっとこいつの顔が輝いた。

「んじゃ行ってみようぜ。こっちだ」


 俺が走り出すと、こいつも遅れずについてくる。どういう育ち方をしてんのかはともかく、学院の生徒並みに鍛えこんでるのは間違いなさそうだ。

 五分ちょっと走って、町の南にある塔の入り口へ着く。


「高い……」

 この子が真上を見上げながら感心した。

「いちおう、この街の観光名所だからな」


 もっとも建てられた由来は、そんな悠長な話じゃない。

 なにせアヴァン帝国が衰退してからこの方、なにかにつけて戦火に巻き込まれてたこの街だ。だからこの鐘楼は普段は時間を知らせるけど……物見やぐらも兼ねてた。


 イザとなったらこの上に何人も上がって周りを見渡して、いち早くどっかの軍隊――自国の場合だってある――を見つけようってやつだ。

 そしてヤバそうならどっか安全な場所へ、女子供から避難させる体勢が、この街には出来上がって受け継がれてる。


「じゃぁ、今も……使ってるんですか?」

「いつもじゃねぇけど、今は使ってるっぽいな。

 まぁワサールがロデスティオに併合されてからこっち、どうもこの辺キナ臭いしな」


 今じゃどの教科書にも載ってる大戦はあっさり終わったけど、そのどさくさにまぎれて力を伸ばしたロデスティオ国のせいで、どうも不穏な空気は絶えない。


「ほら、一番上にちらっと望遠鏡見えるだろ? あれが四方についてて、この近所見張ってんだ。

 昔は目がいいやつが、上がってたらしいけどな」

「そう、なんですか……」


 説明を聞いたこいつの表情は、なんか意味深だった。妙に厳しい顔して、考え込んでやがる。


「どうかしたのか?」

「え、いえ、なんでも……。

――上がれるんですよね?」

「ああ。ほら、来いよ」


 鐘楼の入り口をくぐる。


「お、イマド、帰ってきたのか?」

「ええ、今日」


 叔父さんの知り合いの人が、入り口でいちおうチェックの役についてた。

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