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憧憬 ルーフェイア・シリーズ02  作者: こっこ
Chapter:1 街角
7/33

Episode:07

◇Imad

――試し切りしてもいいですか、だって?

 太刀を抜く動作だけでも驚いてたのに、こいつとんでもないことを言い出しやがった。

 まぁあの身のこなしじゃ無いとは言えねぇけど、それにしたってこの太刀、ちょっとやそっとで使いこなせるわけじゃない。


 けど当人は「あたりまえ」って感じで、さっさと店の裏へ回っちまう。しかも不安や迷いは、ぜんぜん伝わってこない。

 なんとなく、俺とおっさんも後に続いた。

 ワケわかんねぇ妙なアイテムやら木切れやらが置いてある裏手で、こいつがぴたりと止まる。


――ってちょっと待て、普通そんなもんに狙い定めるか?!


 そうはいっても俺の思いなんて、他人に伝わるわけがない。

 一方でこいつのほうは、何の躊躇いもなく太刀を正眼に構える。


 外見からは想像できないような、すさまじい気迫。

 こいつが太刀に流してる魔力が、見る見るうちに高まってく。

 辺りの空気が張り詰める。

 ややあって、すうっとこいつが太刀を振りかぶった。


「破っ!」

 裂帛の気合と共に刃を振り下ろす。


――あれ? なにも起こんねぇ?


 少なくともそん時、俺にはそう見えた。けどこいつは満足げに微笑む。

 そして伝わってくる、自信。


「ありがとうございます。いい仕上がりですね」

 同時にこいつが狙い定めてた、腰掛け代わりの石が真っ二つに割れた。


「あわわ……!」

 おっさんが腰をぬかす。

「マジかよ……」

 俺も心底、度肝をぬかれた。


 これでも俺、入学してからずっと、かのシエラ学院じゃ学年首席だ。だからまぁ、手前ミソをさっぴいてもけっこう出来る部類に入る――はずだ。

 だけどこいつ、そんなのとはケタが違う。

 もっとも当人にとっちゃ、これは別段変わったことじゃないらしかった。


「あの、これ、代金です。

 それと……どこか珍しいアイテム置いてる店、ご存知……ありませんか?」

 何事もなかったって顔してる。


「え? あ、ああ、アイテムね……? ゲイルの店ならいいかもしれないが……」

 おっさんがようやく身を起こした。

「そのお店……どこですか?」

「そうだなぁ、ちょっとややこしいとこにあるから……お、そうだ。イマド、お前案内してこい」

「へ、今なんて?」


 もの思いにふけってたからおっさんの声、よく耳に入ってなかった。


「なんだ、また聞いてなかったのか」

 あきれた調子で、おっさんが同じことを繰り返す。

「ってわけだから、お前が案内するんだ」

「分かったよ。えぇと……?」

 名前を呼ぼうとして、まだ聞いていなかったことに気づく。


「そういえば、名前も言ってなかったよな。俺、イマド=ザニエス。よろしく」

 言いながら俺、右手を差し出した。でもこいつ、握らない。

「イマド――? 珍しい名前……ですね。あたしはルーフェイア=グレイスです。

 それとすみません、あたし右手出す自信がなくて……」


――とんでもねぇヤツ。

 ただ言葉といっしょにすまなそうな感じが来てるから、根は悪いヤツじゃない。


「なんか、すごいんだな。まぁいいや、行こうぜ」

「はい」

 俺らまた、並んで歩き出した。


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