Episode:04
「えっと、十字路は右で、次も右で……二つ目?」
「三つ目」
ついでに言うとあそこ、「地図を見て」ってのも役に立たない。なんか裏路地やら行き止まりやらで、地図と実際とがどうも合ってなかったりする。
「ごめんなさい、ちょっと何かに書かないと……」
「一緒に行ってやろうか?」
初対面の相手に差し出がましい気はしたけど、一応訊いてみる。
そしたら意外にも、この子がぱっと顔を上げた。
「あの、本当にいいんですか?!」
「ああ、かまわねぇよ」
どうせ時間、余りまくってるし。
「――ありがとうございます」
しかも、エラく素直にお礼言うし。
普通これだけカワイイともう少しお高くとまりそうなもんだけど、この子はそういうものの持ち合わせは、なかった。
「いいって。俺もどうせ、時間あるからさ」
並んで歩き出す。
それにしても近くで見ると、その美少女ぶりがさらに際立つ。
陽の光がきらめく、黄金色の髪。
吸い込まれそうに澄んだ色合いの、碧い瞳。
顔立ちの方も、これをつかまえて美少女といわないほうがおかしい。
これに加えてこの濁りのない色だ。
――天は二物を与えず、っつーけどさ。
あれぜったいウソで、神様とやらはえこひいきしまくりだろう。
けど俺、そのうちとんでもないことに気づいた。
ちょっと見じゃ分かんねぇけど、こいつのベルトやブーツ、いろんなモンが仕込んである。しかも全部戦うための道具ときてる。
身のこなしも、明らかに何かの格闘技を使うヤツの動きだった。見かけで判断して手なんか出した日にゃ、間違いなく返り討ちだろう。
でもどうみたってこいつ、俺より年下かせいぜい同じくらい――つまり十歳かそれ以下だ。それなのにこんな技術を身に付けているなんざ、マトモな話じゃなかった。
――うちの生徒、じゃねぇよな?
俺と同じでMeSの生徒っつーのがいちばんありそうだけど、うちの学院にゃこんな子いねぇし。
だいいちこんだけの美少女が在学してりゃ、絶対噂になってる。
「あの……」
呼びかけられて、はっと我に返った。
「次はどっちへ行けば……?」
「あ、悪りぃ。ここは右だよ」
そう言って、先に立って角を曲がる。彼女がすぐ後からついてきた。
だけど足音がしない。当然気配もない。
――どうなってんだよ?
すごく気になる。
けっきょく俺、ためらったけど尋ねてみた。
「おまえさ……どっかMeSの生徒?」