Episode:27
「ウソついてどうすんだよ。てか、先に行ってこいって」
「あ、うん」
こいつを風呂場へ押し込んで、その間に急いでメシの最後の仕上げにかかる。
俺が言ったせいもあるんだろうけど、ルーフェイアのヤツはけっこう長湯だった。
もっともシャワーなんてしばらくぶりだろうから、気が済むまで浴びたい気持ちは分かる。おかげでこっちも、慌ててやらずにすんでいい感じだ。
と、盛大な音が風呂場の方から響いた。
焦って脱衣所へ飛び込む。貧血でも起こしてひっくり返ってたらヤバい。
「おい、だいじょぶか!」
「だ、だいじょぶ……」
幸い、こいつは何でもなかったらしい。脱衣カゴがひっくり返って、服が散らばってるだけだ。
「ちょっと……滑っちゃって」
「まだ調子悪いんじゃね?」
なんせ夕べの今朝だ。いくら寝たからって、まるっきり元通りになるわけもねぇし。
「そう、なのかな……いやぁっ!」
「へ?」
タオルが飛んできた。
「やだっ、見ないでっ!」
「――あぁ」
やっと言ってる意味を理解する。
――けどなぁ。
もうバスタオル羽織ってっから、裸ってワケじゃない。しかもついでに、そのバスタオルの下が……。
「ネミ並みの幼児体型見せられてもなぁ、別にどうってことね……」
「――!」
間髪入れずにカゴがダブルで飛んできて、どっちも俺の頭に豪快に命中した。思いっきり怒らせたらしい。
「ンな怒らな――ちょ、待てっ!」
続けて来た蹴りをどうにかかわす。
「つかお前、タオル一枚で蹴りかますなって!」
丸見えだっての。
「え? あっ、やぁぁぁぁっ!」
だから自分でやっといて、悲鳴あげんなよ……。
「えーとその、ともかく服、着ろよな? 俺、外にいっから」
「うん……」
しゃがみこんだこいつが、半ベソでうなずく。強烈な蹴りとかシャレにならねぇけど、こーゆーとこはなんか可愛い。
外でしばらく待ってから、俺は声をかけた。
「もう平気か?」
「――うん」
答えを待ってから開ける。さすがにおんなじこと繰り返してヒドい目に遭うのは、願い下げだった。
「さっきのすげぇ音で、お前が倒れたと思ったんだよ」
「……ごめん」
着替えてる間に、こいつの頭も冷えたっぽい。
「ホントになんでもねぇんだな? どっかぶつけてねーだろな? 気持ち悪いとかねぇよな?」
ぱっと見問題なさげだけど、念のために訊く。
「それは、だいじょうぶ……ごめん」
「ならいいや、メシ食おうぜ。腹減ったし」
「ご飯って……ホントに?」
また言われるし。
「ウソ言ってどーすんだって、さっきも言ったろ?」
「でも……」
まだ半信半疑のこいつを、食堂へ連れてく。