表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧憬 ルーフェイア・シリーズ02  作者: こっこ
Chapter:4 再会
25/33

Episode:25

 この暗いのにと思って訊くと、けっこーシビアな答えが返ってきた。

「町の病院へ昨日から負傷兵が運ばれてるんだが、予想より多かったらしくてな。手が足りないから来てくれと、さっき連絡があったんだ」


――あ、あれか。

 俺が無視したのが、そうだったらしい。


「悪いが、頼むな」

「ん、わかった」

 まぁ街中は外出禁止令同然の状態だし、こゆ理由なら誰か来ても、すんなり帰ってもらえるだろう。


「あの子は、できるだけ寝かせておくんだ。

 それから私たちは裏手の学校にいるから、何かあったらすぐ連絡しなさい」

「了解」

 近いってのも、なによりだった。あの公園の隣のガッコなら、走ってきゃすぐの距離だ。


「じゃぁ、頼んだわねー」

 妙にうきうきしたふうな叔母さんの声を残して、二人が出てった。

 今まで以上に、家の中が静まり返る。


――にしても、もういいよな?

 このまま待合室にいるってのも癪に障るから、俺は奥の診療室のドアを開けた。

 ベッドの上に、眠ってるルーフェイアの姿がある。


 辛そうだった。

 眠ってるはずなのに、それでもまだ心が痛そうだ。


「……バカやろ」

 小さくつぶやく。

 んなに辛いのに、なんでやめねぇんだか……。

 と、不意にルーフェイアのヤツが目を覚ました。


「え、あ、その、悪りぃ。

 えーと、起こしちまったか?」

「ううん……」

 言いながらこいつが起き上がりかけて――がくりと手を付く。


「ムリすんなよ」

「……うん。

 けど、これだけ、やらなきゃ……」

 大事な話らしくて、こんだけ身体が参ってるってのに、ルーフェイアのヤツはやめようとしなかった。


 見かねて訊く。

「何すんだ?」

「あのね……通話石の通信網入れるとこ、ある……?」

「通信網?」


 なんでいきなり、と思ってたら、訊くより早くこいつが説明してくれた。

「連絡、したいの……」

「だったら二階の、叔父さんのが使えるぜ」

 隣の診療室にもあることにゃあるけど、あれは俺が登録されてねぇから使えない。


「ありがと、わかった……」

 でもルーフェイアのやつ、やっぱ起き上がれないらしい。これじゃ二階の部屋どこか、どうやったって三歩も進めねぇだろう。


「明日じゃ、ダメなのか?」

「けど、きっと心配してる、から……」

――そりゃそうだ。

 行方不明のままってのと、居場所だけでも分かってるのとじゃ、天と地以上の開きがある。


 かといってこの調子じゃ、どうやって連れてったもんだか……。

 少し考えて、俺はこいつにもちかけてみた。


「俺が、やっといてやろうか?」

「……いいの?」

「いいぞ?」

 町を十キロランニングしろとか言うわけじゃ、ねぇし。


「そしたら……場所、書くから……」

 どっからか引っ張り出した紙切れに、ルーフェイアのやつが連絡先を書き付ける。

「ここに、おねがい……」

「オッケー。んで、なんて書きゃいい?」


 沈黙が降りた。

 こいつの碧い瞳から、涙がこぼれる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ