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憧憬 ルーフェイア・シリーズ02  作者: こっこ
Chapter:4 再会
23/33

Episode:23

「お前、ケガしてんのか?」

「ううん……ぜんぶ、返り血……ふふ、やられた……」

 こいつが低く嘲う。

 たぶん自軍のやつが裏切ったことを、言ってるんだろう。


「なんか、元ワサール人のやつが、密告したんだってな」

「それも……あるんだけど」

 また低く、こいつが嘲った。


「他になんか、あるのか?」

「ロデスティオの正規軍、あたしたち傭兵隊を見捨てて盾にして……部隊、壊滅したの」

「じゃぁ、あの壊滅ってのは、まさか――」

「うん。そういう……こと」


 俺は、うちの先輩たちがやったことだと思ってた。

 けど違う。あれは味方に、見殺しにされたってワケだ。


「考えとくんだった……読みが、甘かった……」

 こんなちっちゃいやつが言うとは、思えねぇセリフ。

 なんか一瞬背筋に冷たいものを感じて、俺は慌てて話題を変えた。


「でもよ、なんでお前、こんなとこにいるんだ?」

 こっから国境はたいして距離はねぇけど、戦闘やってた場所はそのまた向こうの、けっこう離れたトコだ。

 まして敗走してんなら、こっちへ来るワケがない。


「たまたまあたし、最前線にいて……前線が、後退してたから……」

 疲れてんのか、そこでこいつはいっかい言葉を切った。

「ともかく、下手に撤退するより……こっちへ来た方が、助かると……思って。

 それにあたし……小さいから大人みたいに、言われないし……」


 よくわかんねぇけど、要するに自分がガキなのを逆手に取って、うまく大人の兵士の目を躱しちまったらしい。

 で、あとはどさくさ紛れに国境超えて、町へ入っちまったんだろう。

 けど確かにこいつが公園あたりで血だらけで倒れてても、敵だなんて誰も思わねぇはずだ。あとは当人がそゆことさえ言わなきゃ、それで終わる。


――すげぇヤツ。

 内心舌を巻きながら、俺は違うことを言った。


「ともかく叔父さんち行こうぜ? 医者だからさ、診てもらえるし」

「うん、ありがと……」

 まともに歩けそうもねぇこいつに、手を貸す。

「だいじょぶか?」

「だい……じょうぶ……」

 言ってるうちに、こいつの身体から力が抜けた。


「お、おい、しっかりしろよ!

――叔父さん、こっち来てくれ!」

 叔父さんは医者だから、こゆ時は頼りになる。

「どうした? お、こりゃ大変だ」

 わけもわかっちゃねぇまま、でもばっちり、叔父さんがこいつを抱え上げた。


「すぐ、うちへ運ぶぞ。

 イマド、その懐中電灯で足元照らしてくれ」

「わかった」

 叔父さんと二人、いつもの道を戻る。


「うん、呼吸はしっかりしてるな。ひどい出血もなさそうだし、顔色もそれほど悪くはないし……。

 しかし驚いたな、これは全部他人の血か?」

 ルーフェイアのやつ運びながら、しっかり容体チェックしてるし。


「叔父さん、こいつだいじょぶなのか?」

「外傷も見当たらないし、顔色から見て内臓の損傷もなさそうだから、たぶん大丈夫だろう」

「そっか……」

 とりあえず、ホッとする。これならたぶんよっぽどじゃなきゃ、ヤバいことにはならねぇだろう。それに叔父さんの家はたいして遠くねぇから、すぐ手当てもできる。



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