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憧憬 ルーフェイア・シリーズ02  作者: こっこ
Chapter:4 再会
22/33

Episode:22 再会

◇Imad

 俺は、暗くなって静まり返ったあの公園に居た。

 あれから五日過ぎてる。


――ムダに、しちまったな。


 あいつが最後に言ったことの意味はずっとわかんねぇで、結局俺はこの町に居っぱなしだった。

 ようやく理由がわかったのは、昨日。それもニュースになったからだ。

 誰も知りゃしなかったけど、実はロデスティオ軍、国境のすぐ向こうに展開して奇襲するつもりだったらしい。それを軍に関係あるあいつは知ってて、俺に「逃げろ」って勧めたんだろう。


 ただ、結果的にはなんにもなかった。奇襲が失敗に終わったからだ。

 報道でしか聞いてねぇから細かいことはわかんねぇけど、どうも徴兵されてた元ワサール人の兵士が裏切って、アヴァン側に密告してくれたらしい。

 その話が元になって、このアヴァン公国はすぐシエラ学院に傭兵隊の派遣を依頼、合わせて自前の陸軍(そんなたいした部隊じゃない)も動かして、上手いこと奇襲部隊を奇襲したってコトだった。

 今はロデスティオ軍の一部の部隊が壊滅、残りはもちょっと奥地の基地目指して敗走してる。


 でもそんなことより、俺には気になることがあった。

 こないだ会ったあいつは、今どこでどうしてんのか……。


 ロデスティオ軍の奇襲の話を知ってて、俺に忠告してくれたくらいだ。たぶん向こうの軍に属してるってやつだろう。

 だけど向こうの軍は、敗走してる。壊滅した部隊もある。


「……ルーフェイア、お前バカかよ」

 俺に忠告しときながら、自分はその真っただ中だとか、どう考えたってバカの極みだ。


 耳を澄ますと静まり返った闇の向こうから、ごく稀に「音」が聞けた。だからたぶん、まだ戦闘は終了してない。

 その中で、あの俺よりちっちゃいあいつは、戦ってる。

 それとも、もう……。


「ンなわけ、あるかよ」

 思わずそう、口に出した。


 なにせあいつはあの強さだ。かすり傷だって、そう簡単には負いやしねぇだろう。

 けど、自分で確かめたわけじゃない。

 だから俺に後できるのは――あいつに何もないうちに戦闘が終わることを、祈るくらいだった。


「イマド、ここに居たのか」

 あんまりいつまでも帰らねぇから心配したんだろう。叔父さんが探しに来た。


「いい知らせだぞ」

「知らせ?」

 たぶんこの戦闘関係だろう。ただそれがホントにいいか悪いかは、わかんねぇけど。

 叔父さんのほうは俺の口調には気づかなかったらしくて、そのまま話し始めた。


「ロデスティオとの間で、停戦協定が結ばれるらしい。お前の先輩たちのおかげだな」

「………」

 答えらんなかった。

 俺らの先輩が活躍したのは、はっきりいえばまぁ嬉しい。


――けど、あいつは?


 でも停戦すれば、ここまで無事ならあとはどうにかなるだろう。

 その時。

(イマド……)

 声が――声じゃねぇかもしんねぇけど――確かに、聞こえた。


「ルーフェイア? どこだ?」

「ここ……」


 声を頼りに、公園の奥へ走る。

 暗がりから、あの金髪が現われた。なんかふらついてる感じで、慌てて支えてやる。

――って、ちょっと待て!

 服をべったり染めてるのは、血だ。



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