Episode:22 再会
◇Imad
俺は、暗くなって静まり返ったあの公園に居た。
あれから五日過ぎてる。
――ムダに、しちまったな。
あいつが最後に言ったことの意味はずっとわかんねぇで、結局俺はこの町に居っぱなしだった。
ようやく理由がわかったのは、昨日。それもニュースになったからだ。
誰も知りゃしなかったけど、実はロデスティオ軍、国境のすぐ向こうに展開して奇襲するつもりだったらしい。それを軍に関係あるあいつは知ってて、俺に「逃げろ」って勧めたんだろう。
ただ、結果的にはなんにもなかった。奇襲が失敗に終わったからだ。
報道でしか聞いてねぇから細かいことはわかんねぇけど、どうも徴兵されてた元ワサール人の兵士が裏切って、アヴァン側に密告してくれたらしい。
その話が元になって、このアヴァン公国はすぐシエラ学院に傭兵隊の派遣を依頼、合わせて自前の陸軍(そんなたいした部隊じゃない)も動かして、上手いこと奇襲部隊を奇襲したってコトだった。
今はロデスティオ軍の一部の部隊が壊滅、残りはもちょっと奥地の基地目指して敗走してる。
でもそんなことより、俺には気になることがあった。
こないだ会ったあいつは、今どこでどうしてんのか……。
ロデスティオ軍の奇襲の話を知ってて、俺に忠告してくれたくらいだ。たぶん向こうの軍に属してるってやつだろう。
だけど向こうの軍は、敗走してる。壊滅した部隊もある。
「……ルーフェイア、お前バカかよ」
俺に忠告しときながら、自分はその真っただ中だとか、どう考えたってバカの極みだ。
耳を澄ますと静まり返った闇の向こうから、ごく稀に「音」が聞けた。だからたぶん、まだ戦闘は終了してない。
その中で、あの俺よりちっちゃいあいつは、戦ってる。
それとも、もう……。
「ンなわけ、あるかよ」
思わずそう、口に出した。
なにせあいつはあの強さだ。かすり傷だって、そう簡単には負いやしねぇだろう。
けど、自分で確かめたわけじゃない。
だから俺に後できるのは――あいつに何もないうちに戦闘が終わることを、祈るくらいだった。
「イマド、ここに居たのか」
あんまりいつまでも帰らねぇから心配したんだろう。叔父さんが探しに来た。
「いい知らせだぞ」
「知らせ?」
たぶんこの戦闘関係だろう。ただそれがホントにいいか悪いかは、わかんねぇけど。
叔父さんのほうは俺の口調には気づかなかったらしくて、そのまま話し始めた。
「ロデスティオとの間で、停戦協定が結ばれるらしい。お前の先輩たちのおかげだな」
「………」
答えらんなかった。
俺らの先輩が活躍したのは、はっきりいえばまぁ嬉しい。
――けど、あいつは?
でも停戦すれば、ここまで無事ならあとはどうにかなるだろう。
その時。
(イマド……)
声が――声じゃねぇかもしんねぇけど――確かに、聞こえた。
「ルーフェイア? どこだ?」
「ここ……」
声を頼りに、公園の奥へ走る。
暗がりから、あの金髪が現われた。なんかふらついてる感じで、慌てて支えてやる。
――って、ちょっと待て!
服をべったり染めてるのは、血だ。