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憧憬 ルーフェイア・シリーズ02  作者: こっこ
Chapter:3 約束
21/33

Episode:21

◇Rufeir

 国境を超えてすぐ、予定の駅であたしは降りた。

 改札口を抜けて、あたりを見回す。

 そして、見つけた。


「――兄さん!」

 急いで走り寄る。


「お帰り、ルーフェイア」

 兄さんはあたしと同じ髪で、瞳だけがちょっと薄い。それと、本当は従兄だ。

 でも、そんなこととは関係なしに大好きだった。何でも知ってて、すごく頼りになって……。


「太刀はどうだった?」

「えっと、これ……」

 急いで差し出す。


「すごくよく……出来てるの……」

「さて、本当かな」

「え……」

 信じてもらえない。


「でも、試し切りさせてもらって……ちゃんと石、切れたから……」

「刃こぼれするぞ?」

「ご、ごめんなさい!」

 言われてみれば、あたりまえだ。せっかく研ぎに出したのに……。


「ごめんなさい、ごめんなさいっ!」

 謝っても済まないけど、でもそれしか出来なくて、何度も謝る。

 そんなあたしの頭を、不意に兄さんが撫でた。


「分かってるよ。お前の腕は、一流だからな」

「……♪」

 褒めてもらった。


「さ、行くぞ」

「うん」

 歩き出した兄さんの後ろを、ついていく。


 あたしの面倒を見てくれるのは、いつも兄さんだった。父さんと母さんも一緒にはいるけど、任務に出てたりどっかへ行ってしまったりで、顔を合わせることがちょっと少ない。

――なにより、変わってるし。

 娘のあたしからみても、両親――特に母さん――は常識外れだった。適当な言葉が見つからないけど、あれは絶対に「普通」っては言わないだろう。


 兄さんが車を置いた場所は、少し距離があるみたいだった。駅前の広場を過ぎても、まだ着く気配がない。


「どこまで……行くの?」

「どこだろうな」

 不安になるようなことを言われる。


「車、だよね……?」

「そんなこと言ってないぞ」

「え……」


 まさかキャンプまで歩くことは、ないはずだけど……。

 けど兄さんはそれ以上何にも言ってくれなくて、あたしは困惑したまま、あとをついて行くだけだった。


「ねぇ、兄さん、ほんとにどこまで……」

「日程が決まったぞ」

 はっとする。


「いつ、なの?」

「五日後だ」

 それで十分だった。

 これでもう――遊びの時間は終わりだ。


「戻ったら、もう少し細かいことを詰めるからな」

「うん」

 日暮れて闇に包まれ始めてるあたりが、また暗くなった気がした。



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