Episode:18
「学校、誰も……いないね」
「夏休みだからな」
俺が暮らしてる学院はその成り立ちの関係から、孤児を優先的に受け入れてる。だから帰る場所がないやつがかなりの数で、夏休みでもけっこうがやがやしてた。
だけど普通の学校ってやつはこの時期は完全に休みだから、人がいるほうが珍しいだろう。
「何、するのかな……?」
分かりきったことを、どういうわけかこいつが訊いた。
「勉強だろ?」
「そっか。
みんなで……するのかな?」
ルーフェイアの言うことは、どう考えてもヘンだった。俺だって学院生だから普通といろいろ違ったりってのはあるけど、もうそゆレベルじゃない。
信じられねぇ思いで、訊く。
「お前さ、もしかして学校、行ったことねぇのか?」
「――うん」
予想通りの、いちばんヤな答えだった。
俺は経緯がちょい変わってっから、そゆことはない。けど学院にいるおんなじ孤児連中には、前はガッコも行かずに働いてたり悪さしてたりってヤツが多かった。
「そしたら、俺と一緒に学院来るか?」
「え?」
意味が飲み込めなかったらしくて、ルーフェイアのやつがきょとんとした顔になる。
「いや、だからさ、お前親とかいねぇんだろ?」
「ううん、いるけど?」
「は?」
この答えは予想外だった。
「ちょい待てよ。親がいるのにガッコもいかねぇで、何してんだ?」
「――戦争」
「な……」
文字通り絶句する。
確かにこれなら、こいつがめちゃくちゃ強そうだったりいろんなアイテム持ってたりってのは、説明つくだろう。
けど、ンな話があっていいワケない。傭兵学校に住んでる俺だって、実戦なんざ未経験だ。
そんな俺へルーフェイアのやつは、別段珍しくもねぇこと言ってるみたいな調子で説明する。
「あたしのうち……父さんも母さんも、傭兵で……だからあたしも、ずっと一緒で……」
「なんなんだよ、それ!」
聞いた瞬間、俺は大声出してた。
親と一緒は分かる。けどだからって、こいつまで巻き添え食ういわれはない。
「でも、しょうがないから……」
諦めきったみたいなこいつの表情が、よけいカンに触った。
「だからって普通、ンなとこガキ連れてくかよ!」
「そうかも、しれないけど……でも、しょうがないの。
それに父さんも母さんも、あたしと一緒に、いたいみたいだし……」
「あ……」
それ以上言えなくなる。
俺はルーフェイアとは、反対だった。おふくろは三歳で死んじまってるし、五歳になると同時に学院に押し込まれて、親父と過ごした記憶もほとんどない。
そしてある日親父が『亡くなった』って連絡が来て、それで全部終わった。
――どっちが、幸せなんだろうな?
やむを得ない理由があったとはいえ親父から放り出されちまった俺よりは、ルーフェイアのほうが可愛がられてるだろう。
でもその代償は、「戦場」。これ以上とんでもねぇ話は、たぶん世の中ないはずだ。