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憧憬 ルーフェイア・シリーズ02  作者: こっこ
Chapter:3 約束
17/33

Episode:17

「どした?」

「あ、ううん、なんでもない……」

 口じゃそう言ってるけど、伝わってくるのは涙だ。


――それも、こっちまで悲しくなっちまうような。


 そのまま俺らは沈黙した。

 木の葉がざわめく音と、水の流れる音とが吹きぬける。

 そのうち耐えきんなくなったんだろう、こいつが取ってつけたふうにつぶやいた。


「精霊、回収しなくちゃ……」

「そいや、そだっけな」

 話に乗ってやる。


「えーと、どうすりゃいい?」

「えっと……そのまま動かないで、くれる……?」

 言いながらこいつが水から上がった。

 んでそれから、どっからかタオル出して足拭いて、靴下とブーツ履いて……。

「おーい、早くしてくれって」

「ご、ごめん!」

 慌てたら今度は、足もつれてやがるし。


「落ち着けって」

「う、うん」

 結局、仕切り直してもっかいになった。

「ごめんね、ほんとに今度は……動かないでね」

「分かってるって」


 なんでも強制憑依ってのは、合わねぇ形のとこに無理矢理押し込むようなもんらしい。だから外す時は、引っ張り出す(?)のが大変だって話だった。

 こいつがなんかしてるんだろう。ずーっとしてた違和感が強くなる。


――マジで気持ち悪りぃぞ?

 しかもルーフェイアのやつもなんだか、苦労してるみてぇだった。


「おい、だいじょぶなのか?」

「たぶん……」

 コワいこと言うし。


「もうちょっと……待って。なんだかしっかり、くっついちゃってて……」

「そゆもんなのか?」

 岩場に貼っついてる貝みてぇな言い方だ。

「あたしもこんなの、初めて……あ、戻ってきそう」

 それからまた少し騒いで、ようやく精霊が取れた。妙な感じも同時に収まる。


「ごめんね、その……大丈夫?」

「ぜんぜんなんでもねぇぞ?」

 答えに、こいつがほっとした表情になった。

「んでよ、それ、精霊か?」

「うん」

 ルーフェイアの手の上に二つ、水晶の塊みたいなのがある。ひとつは碧っぽい色で、もひとつは妙にきらきらした感じだ。


「なんか、いっぱい持ってんだな」

「母さんの……借りたの」

「ンな簡単に、貸せるもんなのか?」

 学院の先輩たちなんざ、ほとんど見せてもくれねぇのに。


 ルーフェイアのほうは、俺のつぶやきは聞いてなかったらしかった。公園の中をひととおり、眺め渡してる。

 そして、言った。

「いいよね。こういう……平和なの」

「あ、あぁ……?」

 なんか不思議な言葉だった。


 誰でも言う。この言葉は。それに実際ここは、どう見たって平和だ。

 けどこいつが言うと、この言葉はなぜか重かった。

 そしてまた、沈黙。

 と、流れる風に押されたみたいに、ふわりとこいつが顔を巡らした。



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