Episode:10
「そっちは誰だ? ずいぶん可愛い子じゃないか」
「えっと……友達ですけど、ダメですかね?」
適当にごまかす。
俺はもう顔パスだからいいけど、物見に使ってると部外者は入れてもらえないことがある。
「友達――学院の子か? そんなら構わんさ。
お嬢ちゃん、こんな遠いとこまでよく来たな。何にもないけど、ゆっくりしてってくれや」
「はい、ありがとうございます」
そのまま俺ら、螺旋の階段を上がった。
「けっこう……新しい……?」
もうちょっと古くからある建物だと思ってたんだろう。ルーフェイアのヤツが不思議そうにつぶやく。
「何度も戦乱で壊れちゃ、建て直してっからな。
鐘楼自体はずっとここにあるけど、こいつは七年前に建てられたやつだってさ」
「七年前……あ」
数字を聞いて、こいつもすぐピンときたらしい。
ロデスティオが周りの国へ侵攻し始めたのは大戦が終結したすぐ後からだけど、このアヴァンは間にワサール国が挟まってるせいで侵攻が遅れた。
でもそれもしばらくの話で、地方へ逃れてたワサールのレジスタンスを一掃した後、このアヴァンへの侵攻が本格的になって――国境近くにあるこの町も大規模な攻略の対象にされた。
「まぁこの塔が爆破されちまった以外は、案外被害少なかったっていうけどな」
「そうなんですか?」
階段をまだ上りながら、こいつが聞き返す。
「俺もよくは知らねぇけど。
ただ聞いた話じゃ、学院から例の傭兵隊が派遣されて、短時間でロデスティオ軍追い出したらしいぜ」
このおかげでアヴァンはどうにか占領を免れて、シエラ学院の傭兵隊はさらに有名になった。
「シエラ学院の傭兵隊って、噂には聞いてましたけど……」
「ま、英才教育してる傭兵学校の、エリート連中だし」
それから俺、なんとなく訊いてみた。
「お前さ、そういや年、幾つなんだ?」
多分俺よりは年下だろうけど、聞いてない。
「えっと……十歳ですけど?」
「――はい?」
思わず一瞬固まった。
こんな華奢で、俺より頭一つちっちゃいやつが、十歳?!
――マジかよ。
「あの、どうか……?」
「同い年だったとはな……」
「えぇっ?!」
どういうわけか、こいつまで目を白黒させる。
「そっちこそ、どうしたんだよ?」
「んと、えっと……きっと、年上だって……」
「なるほど」
確かにちっちゃいこいつを基準にしたら、俺は年上に見えるだろう。
「えっと、あの、ごめんなさい……」
「は?」
今度はいきなり謝られて、思いっきり悩む。
「なに謝ってんだ?」
「だって、あたし、年を間違えて……」
「ンなの謝んなくていいっての。気にすんなって」
って言うか、大柄なせいかだいたい俺は、年より上に見られる。