目覚め
「そういえば、国王に帰り方を聞けばよかったなぁ。」
「まぁ、魔法使いに会えばわかるんじゃねえか。」とまたエレンはいつもの口調に戻っていた。
「そろそろ、宿屋を予約しに行ったほうがよろしんではないでしょうか?」
「それなら、さっきお前らと別れたあとにとっといたぜ。もう、暗いし宿屋に行くか!」
僕らは宿屋に向かった。
宿屋に着くと一人一部屋取ってあった、僕はみんなと夕飯をすませて自室に戻ろうとしたとき、エレンがあらわれた。
「話があるんだが、いいか?」
「いいよ。」僕はなんかもやもやした気分になってきた。部屋に入るとエレンがなにか呟いた。
頭がいたい………エレンになにかされたのだろうか?
「お前は異世界から来たと言ったな、それは俺がおまえを守るためにこちらの世界から送った。それも、丁寧に偽の記憶を与えて…」
「そんなことあるはずがないよ。」と頭痛のするなか僕は言った。
「そろそろ、本物の記憶が戻って来るだろう…」
頭が痛いのはそれが原因なのだろうか、でも、信じられない…
「まだ信じられないって顔してるな。ちょっと、外をみてみろ。」
エレンはまたなにか呟いた。そうすると、そとにいる人たちの顔が変わった。今まで動物の顔をした人もいたはずなのに、みんな人間と同じ顔になった。
そして、振り向くとエレンの顔も変わっていた。猫から人の顔になっていた。彼の顔を見ると目の前が暗くなっていった。
「起きたか?」とエレンが言った、そして、朝になっていた。なんと、エレンの顔を見ると知っている顔だった、執事のパットだった。
エレンは話をまた続けた、穏やかな顔つきで。
「昔、ガルドスは元国王が悪魔と契約するという大事件が発覚し、それで俺とある一人の男を軸とする現国王軍との内乱が起こった。その内乱の最中、その男は俺にある子供を安全なところに逃がしてくれと頼まれた。そして、おれは高等魔法陣を使って、その子供をしばらくの間異世界に送った。その子供がおまえなんだ、そして、依頼した男がお前の父親なんだ。お前の父親は反乱に加担した者の家族は報復で殺されるであろうことを予知していた。そして、お前の両親は殺され、俺は運よく生き延びた…………」
「エレン、その元国王はどうなったんだい?」
「彼はガルドスの王位は失ったが、闇に堕ちた魔法使いどもを配下にして新たな王国を造ろうとしている。」
「それって、もしかして…アルダ王国で反乱を起こした奴らなんじゃ…」
「まさしく、その通りだ。おそらく、お前がこちらに戻ってきたのは奴らの魔力に共鳴したからだと思う。隠していて、すまなかった。」
少しずつ、記憶の整理がついてきた。でも思い出せたはずなのに、心にぽっかり穴が空いているみたいだ。涙が止まらない…
「ありがとう、お父さん、エレン。ぼくを守ってくれて。」
話が終わったのは昼前だった。




