表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダッシュ  作者: 隹乎
2/4

2 はじめまして

草の上に降り立った途端、車内では感じなかった青々しい匂いが鼻いっぱいに入ってきた。汗ばみだした手のひらを拭う。この汗は暑さのせい、だけじゃない。

振り返り、今まで来た道を見遣ると、ちょうどタイヤ痕の辺りだけは草が避けるように生えていた。何度もここを通った証拠かもしれない。前方に目を向けたらこの道らしきものは続いていて、来た道にあるのとよく似た2列の跡がまだ先へ延びていた。

「見失わないように付いて来い」

言って運転手は唯一ある道らしい道から外れ、ガサガサと音を立てながら脇の草木の中へ入っていった。慌てて追いかけるけれど、なんせ獣道とも言い難い木々の合間を縫っているから、こういった所を歩き慣れていない僕はなかなか追い付けない。

見失ったら……このままここで野垂れ死には嫌だなぁ。


ようやく追い付いたと思えば、運転手はとても小さな小屋のようなものの前で待ってくれていた。

「遅い」

「…すいません」

「まさかと思うが、忘れ物はないよな?」

「それは大丈夫だと思います」

「よし、じゃあ入るぞ」

「え」

「どうした」

「この小屋ですか」

「そうだ」

「これ、僕一人すら入れるか不安なんですが…」

あぁ、と口角を上げて、しゃがんだ運転手はその犬小屋サイズのドアノブを回した。

「ここ、入り口だから」

蝶番を軋ませながら開けてくれた扉。

「…わぁ」

ニヒルな笑みに促され恐る恐るその中へ上半身を入れると、奈落にでも繋がっているんじゃ、と思わせる縦穴があるだけだった。むしろ、この四角く舗装された縦穴に合わせてこの小屋があると言った方がしっくりくる。大人一人が座れる程度の狭さだ。まぁ、降りるに苦労しないほどの幅はあるけれど。ただ…

「それで…」

ただ、どうして、梯子のようなものすら無いんだろう。

「どうやって降りるんですか?」


片膝を着いて荷物を背負い、扉の縁に手をかけた体勢そのまま、振り返った。僕のバカ。彼の上がりっぱなしの口角から、どこかやんちゃな空気は感じていたのに。

「『降りれば』分かる」

でも仕方ないか。予想出来る範疇を越えているもの。

「へっ…」

突き落とされるなんて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ