夢 1
ヤトを待つ間、翠子はよく夢を見た。
夢の中で、ヤトは戦っていた。
ある時は、キサや他の仲間を庇って前線に立って剣を振るい、またある時は暗い部屋で作戦を立てていた。
周りに居るのは、見覚えのある谷間の村の住人だったり、まるで見たことのない厳つい戦士であったり……
様々な場に、ヤトはいた。
おそらく敵と戦っているのだろうヤト。
彼の無事な姿に翠子はホッとし、でもいつも真剣に、忙しく働く様子に、心配した。
(ちゃんと休めているのかしら?食事はとっている?たまには、ぼけっとしていたっていいのに)
もしも側に居られれば、翠子はそう言ってヤトに注意したことだろう。
でも、今は何もできない。
ただの夢なのか?それとも翠子の力が千里眼のような事を可能にしているのか?
わからぬながらに、翠子は日々の夢に心を揺らしていた。
――――ある時、ヤトは奇襲を受けた。
完全に背後を取られ、圧倒的多数の敵に囲まれるヤト。
「嫌っ!」
眠りながら、翠子は叫んでいた。
その時、突如、ヤトのいる上空に雲が沸き立つ。
あっという間に空を覆った黒い雲から、雨が降りだした。
ポツリポツリと振りだした雨は、直ぐに豪雨になる。
目も開けられぬような雨が、人間達の戦いを強制的に終わらせた。
無事に逃げ延びるヤト。
雨にかすむその姿に、夢の中で翠子はホッと息を吐いた。
再び、安らかな寝息を立てる翠子。
翠子を囲むように休んでいた4頭の竜が、音もなく頭を上げた。
長い首をひねり、彼らは人間の世界の方を見る。
赤い竜が、直ぐに興味を失ったように頭を下ろした。
『手間のかかる人間だ。』
低く呟く。
その声が聞こえたのか、翠子が小さく身動いだ。
他の竜が咎めるようにギョクを睨む。
ギョクは小さく息を吐き出すと、そのまま目をつむった。
安らかに眠る翠子。
他の3頭の竜も次々と頭を下げ、再び眠る体勢に入る。
最後に頭を下ろしたのはロウドだった。
静かに目を閉じる碧の雄竜。
彼が何を思っているのかは、誰にもわからなかった。




