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界渡りの物語  作者: 九重
83/111

やきもち 1

「ファラって――――というより竜全体がそうだと思うのだけれど、分かりやすいわよね?」


翠子の言葉にヤトは首を上に向ける。


今は夜。ヤトは翠子の足元にくっついて眠る体勢になっている。

ロウドに指摘されてから、翠子のお腹の下のフカフカな毛の中では眠らなくなったヤトだが、一緒にくっついて眠るのだけは、変わっていない。


何より、別々に眠ることは、翠子が嫌だった。




「…………随分、皆と仲良くなったのだな。」


ヤトが聞き取れないような低い声で、小さく呟く。

もちろん翠子の竜の耳は、どんな呟きでも聞こうと思えば聞くことができるので無問題(モウマンタイ)だ。


「仲良くなった気はあまりしないけれど………でも、確かに近くで見ても平気にはなったみたい。」


爬虫類は苦手な翠子にしてみれば、それは立派な進歩だ。


自慢そうに胸を張る翠子を、ヤトは複雑そうに見上げて笑う。


「相手の感情が分かりやすいと思ったり、近くに居ても嫌ではないと感じたりすることは、互いに相手に心を許しているということだ。――――アキは、間違いなく番候補達と仲良くなっている。」


ヤトの言葉に翠子は首を傾げる。

そんな実感はないのだが、そう言われてしまえば、確かに否定もしづらかった。


「そうなのかしら?」


ヤトはゆっくり頷く。


そのまま顔をうつむけると…………、急に両手で頭を抱え、グシャグシャと髪をかき乱しはじめた。



「クソッ、情けない!」



「なっ!――――ヤ、ヤト?」


翠子はビックリして目を見開く。


「お前が番候補と仲良くなることは、お前にとって最善で、誰より喜んでやらなければならないのに、俺は――――」


ヤトは、拳を握りしめる。




「……ヤト?」


「悔しいと、――――嫌だと思ってしまう。」


喉の奥から絞り出すような声で、ヤトはそう言った。


翠子は、目をパチパチする。


(え?――――ひょっとしてそれって、ヤトが私にやきもちをやいてくれているってこと?)


翠子の胸は急にドキドキと高鳴りはじめる。

顔が熱くなってきた。


「お前が、番候補たちと一緒に頑張っている姿を、俺は嬉しく思う。でも、そう思いながら、その反面、俺の中にはモヤモヤとした感情が生まれてしまうんだ。――――まったく、自分の狭量さ加減が嫌になる。」


ヤトは、ガックリと項垂れた。




一方それを聞いた翠子は――――


「嬉しい!」


尻尾をパタパタと動かして、叫んだ。


「はっ?……嬉しい?」


「うん、とっても嬉しい。だってそれって、ヤトがやきもちを妬いてくれたってことよね?」


「……やきもち。」


ヤトはポカンとした。

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